実は初期プロットはメロドラでした ページ34
ころり。
黒い手袋に包まれた手の平の上で小石の夜空が転がった。
「へぇ、それがその恩妖怪に貰ったお守りか?」
つい先刻までのジメジメきのこはどこへやら。
語り始めれば語り終わるまで始終ふわふわと花を飛ばし、時に思い出したように高揚していた山姥切が見せてくれた瑠璃の宝石を、南泉は興味深げにつついた。
面白そうな気配を嗅ぎつけてきた鯰尾と、恋話の気配を察知して突撃しに来た物吉、二振りに巻き込まれた後藤も合流して同じように覗き込む。
いつの間にか徳美組が揃い踏みしていた。
南泉一文字は平安刀ほどいわゆるオカルティックな術なんかに詳しくはない。
存在そのものがオカルトだろうとかいうアレソレは別にして。
それでもこの石に込められた力が良いものであるということは分かった。
ついでに山姥切がパワーアップしてた理由の一端でもあるだろう。
神仏やそれに連なる存在の類いではないらしいが、加護のようなものを感じるのでもしかしたら付喪神と同じのように妖怪と神、両方の側面を持つ妖怪なのかもしれない。
物吉が興味津々と山姥切に詰め寄った。
「それで、その恩妖怪さんをこの時代で見つけたんですよね?会いに行ったんでしょう?どうでした!?」
感動の再会は?告白は?
物吉貞宗はラブコメに飢えている。
最近の愛読書はメープルと白詰草。
布教したとある女性職員とは語り合う仲。
そんな中発覚した所蔵元を同じくする友刃の恋。
食い付かない訳がなかった。
しかし物吉の期待を裏切って山姥切は静かにテーブルと仲良しになり、結末を知ってる南泉が告げた。
「忘れられてたんだと」
「あちゃ〜」
「そんなあ!」
悲劇である。物吉は崩れ落ちた、と思ったらゆらりと立ち上がり、
「……初恋の人忘れられず、ついに探し出した男。しかし当の彼女に彼の記憶は無く、変わらぬ恋心を抱きながらただの客と店員としてもどかしくも温かい交流を重ねる日々。そんな穏やかな日々の中で少しずつ彼に惹かれていく彼女……。しかしそこに新たな恋敵が現れて……!?_______そんな恋物語が始まるんですね!」
「復活早ぇーな」
「それ一瞬で考えたのか?」
「物吉今度は何に影響されたの?」
……後半はともかく前半は現状に限りなく近いんだけど。恋物語、始まってくれるのかなぁ……。
なにやら勝手に盛り上がり始めた外野を他所に、山姥切は物憂げにため息を吐いた。
まさか同時刻、現世でAがブルーベリーを転がしてるなんて思いもせずに。
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翡翠琥珀@カリナと咲(プロフ) - ァ"ァ"ァ"好きぃ... (2022年3月31日 15時) (レス) @page42 id: cceed3ce75 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» ちょぎくんの布教が出来て嬉しいです!沼へようこそ。 (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - sesiroさん» ありがとうございます。成り鶴もよろしくお願いします (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - まるさん» ありがとうございます (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - はじめまして!そして完結おめでとうございます!!大好きです!!!終わってしまい寂しいですがちょぎ君、思い出して貰えて良かったね゙ぇ〜!(T△T)ズビィ この小説を切っ掛けでちょぎ君にハマりました!ありがとうございます!!(謎)これからも頑張って下さい! (2021年3月5日 12時) (レス) id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/
作成日時:2020年12月5日 14時