【刀剣乱舞】成り代わり鶴が本丸で奮闘する話

練度46 ページ46

私の隣で大福を頬張っていた今剣は長物と聞いて岩融を連想したのか少しだけ期待に満ちた目を向けていた。

口元についた粉を拭ってやる。可愛い。
ちなみに膝には秋田。もちろん可愛い。

五虎退との内番中に一期の話をしていた流れでかうっかり私を「つる兄」なんて可愛らしい呼び間違いをしてくれた事から一気に広まり、一部短刀からはすっかりつる兄呼びされ懐かれた。

今剣は「ぼくのほうが兄ですよ！」らしいが、そんな小さなプライドも可愛らしいので無問題。

ちなみに薬研からは「鶴の兄さん」だ。しかしたまに弟に引き摺られてつる兄呼びになって照れるのがすこぶる可愛い。

私、一期が来たら折られるのでは…？お覚悟？

また話が逸れた。

「ちなみに石切丸様の身長は189cmです。最長は岩融様の203cmですね。おおよそ五虎退様1.5人前です」

身長を持ち出されて言葉に詰まる主にこんのすけが悪意なくとどめを刺す。

五虎退1.5人ってどんな例えだ。

「でも、花形さんが槍は早めの方がいいって」

花形さん、というのは件の演練にいたあのベテランの事だ。メールでやりとりしていて、師匠がいない主の先生のようなことをしてくれている。
ありがたや。

しかし主も私と同じ考えだったのか。
そう言われると私たちも否定はし辛いが……刀剣男士にとって主に怯えられるというのはおそらく主が思っている以上に酷なことだ。

「蛍…蛍丸なら大太刀だけど俺より小さいぜ」

おっとここにも長物推しがいた。

演練でも「演練の悪魔」にふさわしい活躍は目にしている。欲しい気持ちは分かる。

「これから先、短刀たちは辛い戦いになるんだそうです。だからやっぱり…」

そのうち、スッと立ち上がった和泉守が部屋を出て行ったかと思えば槍を一本抱えて帰ってきた。

実は顕現しなかっただけで刀剣保管庫に一本だけあったのだ。

それを主に差し出す。

「あんたがそこまで言うのなら止めはしねぇが、高身長の刀が来ても怖がらないで向き合う覚悟は決めてくれ。主に泣かれんのは、だいぶ堪えるんだ」

彼は主の異性高身長の苦手さ一番の被害刀剣だ。言葉に重みがある。

「俺たち刀剣男士と向き合うのは主としての責務だ。
顕現するならこれから先、どんな刀が来ても怯えや甘えは許されなくなると思ってくれ。覚悟はあるか」

主の性格が"主"という立場でも許されているのはある意味、私たちが甘やかしているからだ。

和泉守の言葉に数秒黙った主は、やがてそっと槍に手を伸ばした。

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