練度40 ページ40
大太刀の一撃は重く強い。
機動についてよくネタにされる石切丸なら尚更に。
だからその一撃をなんとか受け止めた鶴丸が吹っ飛ばされるのは当然の結果だった、のに。
彼は右手を刀から離して石切丸の袖を掴み、それを防いだだけに終わらず引き寄せ左手一本で突きを繰り出して来た。
せめて一矢報いる…!
そんな気迫に満ちた獣のような目で。
スッと自然と目をひくような、不思議な魅力を持った刀だと思った。
見た目が違う、いわゆる亜種と呼ばれるようなものではない。
その真白な容姿も合わさって
雪が降った日の、静かで、不思議な暖かさを思わせる刀だと思った。
短刀の髪を整えてやっている姿を見た。
はしゃぐ彼らを安心したように見つめる金色の瞳に慈愛が満ちていて、ああ、大切に思っているんだなと一目で分かる。
そんな彼の部隊と戦うことになったのは偶然だけれど、部屋に入ってきた彼の目にはもうあの暖かさはカケラもなく、あれはおそらく身内にだけ見せる表情で、それが少し残念で。
練度が上の刀に勝ったのは見事の一言だ。とくにあの小狐丸を破壊した動作は思わず主と共におお!と感嘆の声を漏らすほど。
「主」
「どうした石切丸?」
「あの本丸とは縁を結んでおいた方がいい」
絶対に強くなるよ。
そう言うと主も頷く。
主は怯えられてしまったが、己の刀剣のために立ち向かう姿に好感を抱いていたから、出来る手助けはしてやりたいと思っていたことだろう。
勝利を手に帰還した彼らと審神者を他所に相手の審神者が帰ろうとしたのをさすがに見とがめた。
石切丸の本丸は報酬目当てだからまだいいが、練度上げに来ている部隊がある中で2部隊分も不戦勝なんて、と。
しかしその必要は無かった。一歩踏み出した石切丸を手で制したあの鶴丸が何かしたんだろう。
問題を見極め行動、対処してしまう姿は長きを生きた平安刀らしく、予想外の戦法で驚かせてくる所は審神者界でびっくり爺の名を欲しいままにする彼らしい。
対峙してみたい、と思った。
戦より神事が得意だと言う石切丸が。
あの獰猛な目で首を狙われた時、柄にもなく高揚した。
なのに練度差というものは残酷にもその実力の前に立ちはだかる。
鶴丸の練度では石切丸の刀装を突破できなかった。
あまりに呆気なく決着がついてしまった。
けれどどうやら大太刀に興味を持ってくれたようで
あれこれと質問してくる様は微笑ましい。
きっと長い付き合いになるだろう。
そんな予感がした。
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mokohu(プロフ) - アヤさん» コメントありがとうございます!練度7の打刀は山姥切くんのことなのでっっ文章ヘタですまぬっ (5月3日 20時) (レス) @page7 id: 3b95fd455e (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - 練度7の小夜は「打刀」ではなく「短刀」ではないでしょうか? もう何回も読んでいてとても素敵な作品です!更新頑張ってください!! (4月18日 16時) (レス) @page8 id: ebbefadb1f (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 - 面白かったです。これからも頑張ってください!更新楽しみにしています (2021年7月27日 23時) (レス) id: 69d630334c (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - ミントさん» 誤字報告ありがとうございます!個人サイトから移してきた時にミスったようです。修正しました。これからもよろしくお願いします! (2021年4月22日 19時) (レス) id: ddb41ae1e3 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 練度39の「Aの前に」という部分は正しくは「Bの前に」ではないでしょうか?
あとは「気合い」より「気概」の方がいいと思います。
とっても素敵な作品で思わず一気読みしちゃいました。これからも更新がんばって下さい!! (2021年4月22日 17時) (携帯から) (レス) id: 4f4058a2da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/
作成日時:2020年6月26日 16時