【刀剣乱舞】成り代わり鶴が本丸で奮闘する話

練度34 ページ34

半泣きの刀剣男士を抱えて走る私たち一行はかなり目立った。

加州はもがいているが練度が上で力も上な太刀に叶うはずもない。

「鶴丸さーん！」

堀川の声だ。流石偵察の高い堀川国広。足止めに成功したらしい。

「加州、言いたいことは言わなきゃ伝わらん。そのための口だ。手を離されそうになったなら縋り付け。そのための肉体だ。愛するよりも愛されるよりも忠義に生きてみせろ。それが初期刀だ！」

それだけ言って加州をぶん投げた。

とっさに受け身をとって着地し、こちらを睨んで来るけどこちらも睨み返し、ビシッと隣の審神者を指さした。

「きみが向き合うべきは俺じゃなくてそっちだ。逃げるなよ加州清光」

後ろの三人もそれぞれ短刀を開放する。と、すぐさま主に纏わり付く。

捨てないで、置いてかないで。
今度はきっと勝ってみせるから、そばに居させて。

どこまでも純粋素直な好意と忠誠だ。が、これが加州を追い詰めた原因の一端でもあるな。

予想し得た事態ではある。

だからこそうちでは早いうちから初期刀を主の特別と教え込んだ。

加州は山姥切と同じだ。初期刀は主に性格が似やすい。

プライドが高いし素直じゃないって事しか分からないけど。そこが似たのは違いないだろう。
加州清光のわりに主への好意が分かりにくい。

なのにそばに分かりやすく可愛い短刀が侍るから静かに自信を喪失することになる。

あとはいろんな人や刀に聞いた話だ。
コネクションって大事。

「お、俺だって！！」

短刀に負けないくらい声を上げて審神者の手を取った加州を見て踵を返す。

「あれだけでいいのか」

「いいだろう。他本丸のことだ。それに、あれでダメならそれまでさ」

短刀たちが捨てないでと縋ったおかげで、こちらに向いていた不審な目も無くなったしね！

あちらさんがどういう目で見られるのかまで気を回す義理は感じない。

ドライ？まさか、十分すぎる対応だろう？

「急いで戻るぞ。次のためにあんたはわざわざ銃兵くらったんだからな」

「おっと時間を使いすぎたか？了解だ初期刀殿」

そう言って、最初の頃よりずっとたくましくなった我が本丸の初期刀の背を追った。

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