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熱い、脳まで溶けてしまいそうだ。
離れたくても、頭を押さえられているから離れられない。
それに、利き手も押さえられているから殴ることも出来ない。
いくらAでも、男の力には敵わなかった。







「ッ、は、ぁ…」







飲め、と云うように舌が血を押し込んでくる。
甘さすら感じる血を飲み込めば、コクリと喉が鳴った。







「ッ、ぷはっ、ちょっ、待ってくださ…」








漸く離れたと思ったら、再び太宰が自分の血を口に入れる。
もう嫌だと云うように首を振るが、問答無用で再び唇を奪われた。







『甘い、嫌だ、恥ずかしい、美味しい…あぁもう』








甘くてぼんやりしてくる。
甘美な酒のような血で、頭が回らなくなった。







「ッはぁ、はぁ…」








口移しで何度も血を飲まされた。
そして漸く解放された時には、Aは喉の渇きを感じなくなっていた。







「嫌だと云うのも飲みたくないと拒むのも構わない」






ぐったりしたAを抱えながら、太宰はやけに静かにそう云った。







「その代わり、またそうやって駄々をこねたら、何度でも飲ませるから」







太宰は、Aにとって恩人であり、不思議な立ち位置の男だった。
だから、そんな彼から血を貰うことは他の仲間以上に気が引けた。
だが恩人だからと云って、反抗や口答えをしないかと云えばそうではなかった。
反抗も口答えもするし、制裁をしたりもした。
いつもなら、こんな事をされたら罵倒するか、殴ったりするのだが。







「いいね」







冷たさと同時に熱を孕んだ瞳がAを静かに見下ろした。
巫山戯るなと云ってやれ、なにするんだと云ってやれ、いつもなら云えるだろう。
なのに、Aの口からは、







「ひゃい…」







という情けない了解の言葉であった。
負けた、完敗だった。
あんなこと何度もされてみろ、可笑しくなるのはAの方だ。







「よし、いい子」







漸く太宰はにっこり笑い、頭を撫でた。
さっきあんなことをしたとは思えないほど穏やかな笑みだった。







「欲しくなったら私を呼びなさい、いいね?」








「ひゃい…」







「よし、素直な子は好きだよ」








経験の差を思い知った。
太宰相手に、あんな乱されるとは思って無かった。
太宰が出て行った後、Aは布団をかぶり、








「ううう…あの人怖いぃぃ…」








と呻きながら顔を押さえていた。

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もこすけ(プロフ) - あっきーさん» 嬉しいコメントありがとうございます。人狼ゲーム、書いていても楽しかったです。考えるのはなかなか大変でしたが、喜んでいただけて良かったです。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月26日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
あっきー - 人狼シリーズ大好きです!本当に天才だと思います!!これからも楽しみにしています! (2019年11月25日 17時) (レス) id: d54700ef05 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございました。本当ですね、たった今気づきました。ありがとうございます。これからもこの作品を、よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
そー氏。(プロフ) - 返答ありがとうございました。いつもこの作品応援しています。ちなみにタイトルが「この十六」になってますよ「その十六」じゃありませんか? (2019年11月3日 9時) (レス) id: 15750ac93c (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - そー氏。さん» ご質問ありがとうございます。小泉は、普段は髪で隠れて見えませんが、首筋にホクロがあります。基本、見えるところにはありません。ちなみに母親の雪も同じです。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年8月17日 20時

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