【文スト】この世界と番外編 その十六

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夜のターンとなり、Aは己の携帯を見下ろした。






『多分、今晩で占い師は殺される。となると、魔女を殺すのは今しかない』







魔女、呪いの力を持つ人狼側の人間。






『候補者は立原道造、谷崎さん、賢治、そして…太宰さん』







この中に魔女が居る。
となると、不思議なのは敦と芥川の死についてだ。
今まで正確無慈悲な襲撃が続いていたのに、あそこからいきなり統率が乱れた。
そう、中也が処刑された夜から…。






『何故？人狼同士なら夜のターンでメールでの会話が出来るのに』







何故しなかった？
いや…出来なかったのか？






『例えば、いきなり仲介役が居なくなり指示が出せなくなった…とか』







中也が処刑されてから人狼は動きが僅かながら乱れた。
つまり、仲介役は中也で、言葉を交わさずとも相手との連携ができる相手だった？







『あぁ、なんてこと！やってくれた』








中也と意思疎通が可能で、尚且つ狡猾な手段を行える魔女。
どうして気づかなかったのだろう、やはりあの人が敵だと云うことに。







『矢張り貴方か太宰さん』







太宰は魔女、故に人狼と会話ができなかった。
しかし代わりに中也が仲介役となって指示を人狼に伝えていたのだ。







『ならば危険な魔女を生かしておく理由は無い』








今度こそ貴方に勝ってやろう。
Aは携帯の画面を開き、文字を打ち込むと司会役の雪に送信した。







『貴方に勝てたら、少しは貴方の足元には行けるかな』






あの太宰に勝てるとは思えないが、引き摺り下ろすことは出来る。







『今度こそ、貴方に』








Aの手中の携帯には役職が書かれていた。
そこには、






『暗殺者、襲撃先太宰治』








そう、Aの役職は暗殺者。
夜のターンで人狼よりも早く相手を暗殺できる特別役職。





『貴方は今晩、呪いを発動させる。
相手は鏡花か、賢治か、ナオミ…でも人狼とはもう連携が取れない』







メールを送信し、目を閉じる。
明日で全てを決めてやる。







「皆様、おはようございます。
それでは、犠牲者を発表したいと思います」







太宰と一瞬目が合う、彼は…嗤っていた。
あの笑みは見覚えがある、かつて探偵社で人狼ゲームをやったとき、Aを出し抜いた時の。







「犠牲者は泉鏡花さん、太宰治さん…そして」







雪がAの方を向いて微笑んだ。







「小泉Aさんの三名です」







「…え？」

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