【文スト】この世界と番外編 その十六

＊ ページ19

「はい、皆様おはようございます。
あぁ、なんて哀しいことなのでしょう、昨晩犠牲者が出てしまいました」






雪のどこか演技めいた口調に、緊張が走った。







「昨晩、与謝野晶子さんが死亡しました」







「ありゃ、妾かい」







与謝野は肩をすくめ、「残念だねぇ」と云いながら部屋を出て行った。







『与謝野先生の死亡は、可能性としては人狼の襲撃か妖狐の呪殺だが…』







「占い師、結果は」








「僕は彼女を占いしましたー！結果はシロ！！」








梶井はAを指差していた。
Aはキョトンとしつつも、とりあえず無実が証明されてホッとした。
対する鏡花は紅葉を占っており、こちらもシロ。







「霊能者、結果はどうだった」







結局、国木田は三人ともシロと出た。
すると、谷崎が「そう云えば…」と口を開いた。







「妖狐は？探しますか？」







「待ってください、昼の会議で妖狐を処刑すれば道連れが発生しますよ」






「いや、そういうお前が妖狐なんじゃ…」







「は？」







「なんでもねぇ」







立原は失言を撤回しつつ、目を泳がせた。







「このままあやふやで投票するのは避けたいね」







「あ、芥川先輩、どうしますか？」







芥川もかなり追い詰められているようだ。
この状況は良くない、誰か、なにかどこかにメッセージが無いだろうか？






コン







聞き逃してしまいそうなほど小さな音だった。
誰が鳴らしたのかは判らない。
しかし、近くで鳴った気がした。






「もう面倒くさいから中也処刑にしない？」







「ふざけんな、手前でいいだろ」







「お、落ち着いてください二人とも」







「人虎、少し黙れ」








騒ぐ四人に目が行きそうになった時、再びコンと音がした。
なんとなく視線を反対方向に向けると、ナオミが退屈そうに指を弄んでいた。
指二本を下に向けたり、人差し指と親指を擦り合わせたり。







『相当悩んでるのかな』








「…そう云えば、姐さん、さっきから静かっすね」







「…ほう、わっちを疑うのかえ？」








中也を見つめながら紅葉がフッと微笑んだ。
その瞬間、会議は終わりを告げ、投票にうつった。
そして、紅葉はあることに気づく。







「まさか…！」








次の瞬間、紅葉の追放が決定された。
彼女はクスクスと笑いながらも、「そうかえ…」と何処か納得したような顔をしていた。

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