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二百五十四話 [母の過去] ページ6

坂口安吾は七號機関の長。
その事実に場の空気が張り詰める。


「そんな…あり得ません!安吾さんは政府機関の人間ですよ!?」


「まだ判らんか?その『政府』が犯罪組織を創ったのだ」


敦は衝撃を受けていたが、Aには納得できた。
特務課が母の存在を隠蔽したように、完全に綺麗な組織など存在しないのだと。



「『七號機関』は政府の闇だ。
政治犯罪の揉み消し、違法な作戦、醜聞隠し…。
資料を渡され、証拠隠滅をしたのは私だ…間違いない」


大衆に見せているのは綺麗な部分。
本当の政府の裏はべったりと黒で汚れているのだ。
Aがぎゅっと手を握った時、ふと虫太郎が思い出したように口を開いた。



「そして…旧政府がお前の母親にやった所業とその結果の惨劇もな」



「え…?」



「あれほどの過去と所業を手に負えなくなり、様々な者が隠蔽に手を貸した。
旧政府の行いとはいえ、あれは現政府からしても隠したいものの筈だ。
あんな、人を人とも思わない事を一人の人間にやっていた事が露見すればタダでは済まな…」



「なんですか…それ…?」



Aの声は震えていた。
母、雪の過去。
虫太郎の話し方だとまるで、



「母は…旧政府に何かされていたのですか…?」



「…知らない、のか?」



虫太郎は気まずそうな顔をして、目をそらした。
そして、


「知らない方がいい、本当に反吐が出そうな内容だ。
魔女としての活動の記録よりも、彼女の過去は凄惨そのものだ」



虫太郎は恐らく、雪の過去の隠蔽に手を貸していた。
それほど、汚れきったものだったから。



『母は…慥かに政府に頼まれて手を汚していた。
でも…彼女の過去は知らない、何処で生まれたのかもどんな環境で育ったのかも…』



思えば、自分は母の事については知らないことの方が多いのだ。
魔女としての顔、母親としての顔、そのどちらも知らないことが多すぎる。



『お母さん、貴女は一体…何を背負っていたの?』



記録にある魔女としての雪は、無邪気で残酷な女王としての姿。
遠い昔に存在している母としての雪は、子の為に残り少ない命を賭ける優しい姿。
今考えれば、そのどちらもがかけ離れ、別人のようにすら思えてしまう。



『いや、それ以上前にも…まったく別の貴女が存在してるとしたら…』



母である前の、魔女である前の雪の過去。
それは、一体どんな運命を見せるのか。

二百五十五話 [完全犯罪の力]→←二百五十三話 [特殊部隊のお出まし]



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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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