二百五十三話 ［特殊部隊のお出まし］ ページ5
完全にやる気の乙女二人に、虫太郎は海老のごとく跳ね上がる。
「うおぉ！腹痛が治った！
やる前に治るとは！善く効く方法だな！ハッハッハッ！」
「嬉しい」
「…それは良かった」
あのままでは確実にやられてた。
虫太郎は心の中で小娘どもめ…と思い切り歯ぎしりをした。
だがまだ終わりではない、虫太郎はカッと目を見開く。
「むむ！いかん！この廊下の角度は秘釈義法に於ける金牛宮の位相！」
訳の判らぬ事を叫び、騒ごうとする。
すると再びAは手首を鳴らし、鏡花は短刀を見せた。
「一回記憶飛ばしてリセットしよう。それか…」
「秘釈義に効くツボも知ってる」
「うおお！方角が治った！」
物騒な乙女の脅しに、虫太郎は具合が悪いフリをするのをやめた。
三度目は本当に心臓を止められたり、短刀でツボを刺されたりしそうだ。
ふと、その光景を苦笑いで見ていた敦が何かに気づく。
「何だろう…警備員が去っていく…？」
「…外が何か騒がしい」
「…まさか」
硝子窓からそっと外を見下ろす。
そこには、黒い防護服に身を包んだ数多の特殊部隊と、
「坂口参事官補佐…」
その中心で険しい顔をする、坂口安吾がいた。
異能特務課、考えうる最も厄介な異能者集団。
『味方、とは思わなかったがまさか敵になるとは…』
母の件で、判りあえる可能性はただでさえ低かったのに。
フードを深く被り直し作戦を考えていると、
窓の外を見た虫太郎は安吾の顔を見て顔色を変えた。
「奴は…拙い、拙いぞ…何故、奴が此処に…！？」
地獄の番人でも見たような顔をし、虫太郎は今まで敦達から逃げようとした作戦を完全に棄てた。
「事情が変わった、何としても脱出せねば」
青い顔で彼は云う。
「あの男に捕まれば、全員終わりだ」
虫太郎は低い声でそう呟き、そして逆方向に歩き出した。
「『七號機関』という組織を知っているか？」
虫太郎の言葉に三人は顔を見合わせ、同時に首を振った。
「私は嘗て其処に囚われていた。
犯罪の隠蔽と洗浄を専門にした犯罪組織だ」
「聞いてる、囚われの貴方をドストエフスキーが救出し、
見返りに『共喰い』への協力を要求したとか」
「…坂口安吾は、その犯罪組織の長だ」
その言葉に、三人は目を見開いた。
あり得ない、信じがたい真実を目の当たりにして。
二百五十四話 ［母の過去］→←二百五十二話 ［腹痛の止め方］
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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (
レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス＆良いお年を！！ (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年5月18日 18時
