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路地裏を一目散に駆け抜ける三人の少年少女。
先頭を走る少女が握る携帯の通話が切断された。






「あ、バレた」






「ってことは作戦成功?」






「賭けだったけど…作戦成功」







いつもより不敵な表情をしたAはやたら美人なだけに、笑うとどこか太宰に似ていた。
日頃散々からかわれている太宰を出し抜けたのがよほど嬉しいらしい。






「携帯を使っての陽動作戦…急拵えの作戦にしては上手くいった」







「本当、見つかるかと思った…」







「うん」






敦と鏡花は、あの状況でも直ぐに作戦を思いついたAを純粋に凄いと思った。
携帯をその場に置き、移動した先でその携帯に電話をかける。
そして相手が音に反応している隙に別の出口から逃げるのだ。
成功したあと、Aの携帯を着信拒否にして。






「携帯新しく買わないと…痛い出費だった…」






敦には出来ない、数万円の携帯をポンと出すなんて。






「…僕も、少し負担します…」






「私も」







「いや…いい…太宰さんに買わせるから」







最後にボソッと「最新機種を」という辺り、過去の太宰にやられたことを根に持っているらしい。







「それで…ッ、どこに向かってるの?」






「海の近くの公園。電話越しに波の音が聞こえたから多分そこ」






三人が路地を抜けると、少し見慣れない建物が目立つ街に出た。
辺りは暗く、夜なのだと気づいた。







『…怖くない、と云えば嘘になる』







Aは先を歩く二人を見つめながらぼんやりと考えた。
あの瞬間、太宰に追い詰められた瞬間、確かに感じたのは恐怖だった。
二人と同じように怖くなった。







『でも…動けなくなるほどじゃなかったのは、きっと何処かであの人だからと思っていたから』







Aと同い年の太宰もまた、大人の世界に放り込まれた子どもだから。
あの瞬間、撃とうと思えば撃てたのに引き金に指をかけられなかったのは完全な私情だ。
こういうところが甘いな、とつくづく思う。







『でも今は、皆で元の時代に戻ること、それだけが』







その時、強い海風が吹いた。
目を閉じた一瞬、ふわりと硝煙の匂いがした。







「だーれだ?」







優しく覆われる視界。
敦の動揺の声と鏡花が息を飲む音が聞こえる。







「捕まえた」







目を覆う手が、太宰のものだと、"過去の太宰の手"だと理解した時には手遅れだった。
もう、戻れないのだと脳は理解していた。

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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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