【文スト】この世界と番外編 その十二

その後お祓いに行った ［レキ様リクエスト］ ページ43

小泉Aは霊感体質である。
死んだ者や悪霊が視えるし、声も聞こえる。
だがお祓いや成仏をさせたりできるような特別な力があるわけもなく、
視える聞こえる感じるの三拍子が揃っているが何も出来ないという辛い体質なのだ。






「この前体験した話、なかなか衝撃的だったから聞いて欲しい」







「いやだぁぁぁぁ！！」







敦は逃げた、必ずかの邪智暴虐の同期から逃げねばと決意した。
故に、彼女の怪談は死ぬほど怖い。
それは話を聞いた者が暫く暗闇に怯えるほど。
ちなみにだがAの怖い話は心霊系がほとんどだが、稀に生きてる人間の怖い話も披露されるため警戒が必要である。







「あの日、一人で夜道を歩いてたんだ」







逃げ出した敦を取っ捕まえ、Aはポツリポツリと話し出した。
しかもそれは休憩室で行われている為、もれなく社員全員が聞くことになる。
太宰はあははと笑いながらも「私たちだけ苦しむのは不公平だ」と、
マフィアにこの話を聞かせる録音のスイッチを入れた。






「後ろから足音聞こえて…でも不思議と気配がしなかった」






「もうすでに嫌な予感がする」







「本能的に、振り返っちゃいけないと思ってそのまま帰った」







「…え？終わり？」







「いや続く」







「ですよねー」







「帰って、部屋で落ち着いた後洗面台に行ったんだ。
そしたら…いるんだよ、鏡にうつる私の後ろに人影が」







「うっ…」







Aは髪を乱して、「こんな感じ」と云った。







「髪を乱して、目を真っ赤に充血させて…唇をありえないくらい歪ませた女が…」






真っ赤な歯茎を見せて笑ってるんだよ。
その言葉に皆の背筋は冷たくなった。







「しかも何が怖いってその女…この前来た依頼人にそっくりなんだよ」







「…え？」







「ほら、旦那の浮気調査依頼してきたあの人」








確かに一ヶ月前にそんな依頼も来ていた。
だが、彼女の依頼は「旦那を殺してほしい」という内容で門前払いになっていたはず。







「生き霊っぽかったから、逆恨みだと思う」








「…ひぇ…」








「敦も夜道は気をつけたほうがいい。あれは少し危険だから」







「き、危険…？」







「私あのあと、台所の棚から包丁落ちてきて死にかけたから」







「お祓い行こ！？お祓い！」







「放っておけばどうにかなるでしょ」







「怖いよ！！」

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