【文スト】この世界と番外編 その十二

＊ ページ42

マフィアというのは容赦をしない組織である。
だが…闇鍋まで容赦も躊躇いもせず行うものなのだろうか？






「…ッ、辛ッ…」






ずるりとしたものを噛んだ瞬間、口の中で弾ける辛みに水を手に取った。
だが、それも謎の苦味を感じた。
どうやら中也も同じように鍋の具材を食べ、水を飲んだらしく、盛大に吐き出した。







「ッ、んだこれ！…おい梶井！！」







「あ、バレた…わぁ苦い！」







「なに入れやがった！！」







狂気だった。
狂科学者梶井基次郎をはじめ、皆がおかしくなっていた。
早々に気絶してリタイアした立原と銀が羨ましい。
ちなみに広津はその数分後にぶっ倒れた。







「あぁ…ふふ、あの人が川の向こうで手を振っておるわ…」







紅葉が虚ろな目でクスクス笑う。
どうやら逝ってはいけない所に逝こうとしているらしい。
全力で止めた、紅を塗った口に水を流し込んだ。







「本当に信じられない…なんでこんな不味いもの作れるんだ…」






父が生前、作ってくれた料理より酷い。
これはもう食材への冒涜だ。






「芥川先輩！？誰か医者を！先輩の意識がありません！」







「それを世では気絶という」







恐らく梶井がぶち込んだブツを食べたらしい芥川は無様に倒れる姿を見せたくない意地からか、羅生門に体を預けて気絶していた。







「先輩、先輩ー！」







「失礼」







樋口が芥川の肩をガックンガックン揺さぶるので、Aは彼女の首に手刀を落とした。
一瞬で樋口は気絶し、その場に倒れる。






「中也さん、その人押さえててくれますか？」







中也が不思議に思いながら梶井を押さえると、Aは躊躇いなく小さな小瓶を取り出し、ドブ川の底のような色をした液体を梶井の口に流し込んだ。







「んぐっ…これは…テトロドトキシン…」








そう云って梶井は気絶した。
残されたのは、闇鍋とAと中也のみ。







「…あれなんだ？」







「猛毒の代わりに太宰さんに持たされた『元気ドリンク』です」







「やべぇ匂いしかしねぇ…な…」







限界だったのだろう、中也はそのまま倒れた。
結果、生存者はAのみになった。







「…あれ？この現場見られたらまずくないか？」








その予想は的中し、様子を見に来た構成員に『幹部及び構成員の暗殺』の疑いがかけられ、
ポケットから太宰が仕込んだ猛毒が出てきて、解放されたのは五時間後のことだった。

その後お祓いに行った ［レキ様リクエスト］→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す