【文スト】この世界と番外編 その十二

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「あぁぁぁぁぁ！！」






「うえっ…気持ち悪ッ…！」







「前見て！！前！！」







「だから云ったでしょう？苦手だってうふふ」







「この人狂ってる！！」







自分の母親ながらそんな暴言を吐いたAは襲いくる振動に口を押さえる。
こうなったのは簡単な話。
雪の苦手なことが運転だと知った後、彼女に「ドライブします？」と誘われた。
下手と云ってもそこまで酷いものではないと考え、怖いものみたさに乗ったのだ。
そして…今死にかけている。






「なんで！？なんでこの人ブレーキ踏まないの！？(A)」






「人生とは止まれないものです(雪)」







「あっははは、酷いねこれは(太宰)」







「うえっ…うぐっ…視界が回る…(国木田)」







「本当に免許取った！？(A)」







「…はい、勿論(雪)」







「なんだ今の間！！(A)」







警察に捕まらないのが不思議なくらいの速度で爆走する車の中、Aは雪にハンドルを握らせたことを後悔した。
この女、さっきから一回もブレーキを踏んでない。







「太宰さん並みに酷いですよこれ！！」







「心外だなぁ、私ここまで酷くないよ」








「私三半規管強いですけど貴方の車に乗るとき酔い止め飲んでるんですから！！」







「うっ…」







「国木田君が気絶した」







「あら、一番丈夫そうな方なのに」







「テーマパークのアトラクションより揺れる車運転してなにをのたまってる！」







「貴女ツッコミ向いてますね」







「あ、それ私も思った」







「喧しい！！」







普段のクールさを捨ててAは叫んだ。
この狂った空間でまともなのは自分しかいないと確信したからだ。







「私、どうしても運転だけは向いてなくてですね、
福沢さんに『貴女はハンドルを握るのをやめた方がいい』とまで云われて。
ちなみに廃車になった車のうち四代目が廃車になった時彼も同席してました」







「もう運転やめろ！！」







「廃車になった車のお金で家建ちますよ」







「莫迦！！」







母親という遠慮の中、精一杯の罵倒も彼女には響くはずも無く、その後一時間地獄のドライブを味わった。






「…太宰たちはどうした」







「Aんとこの雪さんとドライブに行ったよ」







「…生きているといいが」







福沢は、かつての友人が運転する車に乗った部下たちを心の底から憐れむのだった。

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