無明の王と出られない部屋と ［富士山様リクエスト］ ページ28
その日は、帰るのが少し遅くなった。
しつこく食事に誘ってくる依頼人に手を焼き、漸く帰ってもらった時には時刻は夜の九時半を回っていた。
いくら辞めたとはいえ、元学生がこんな時間まで出歩くわけには行かないと急いで社員寮へ戻る。
『貴女は誰よりも美しい』
「…莫迦か」
耳に残る、依頼人の男の声。
元より、母親に酷似した容姿は美しいだの妖艶だのとよく云われた。
だがそれは所詮見てくれの話。
「中身なんて見てないんだ」
だから、容姿が美しいだの云う輩は好きじゃない。
嫌なことを思い出し、Aは早く帰ろうと足を早める。
そして、曲がり角を曲がった瞬間、誰かにぶつかった。
「…貴女が悪いんだ」
どうしてか、腹が焼ける様に熱い。
じわりと、なにかが広がる感覚がした。
「ッは…」
刺されたのだと気づいた時には、ナイフは腹から引き抜かれていた。
「貴女が、俺を見ないから」
フードを被ったその男は、あの依頼人だった。
刃先に薬でも塗ってあるのか、視界が歪む。
「だから…こうするしかないんだ！！」
振り上げられたナイフが、月明かりに照らされて赤と銀色に光った。
「…異能、ですか」
彼、条野採菊は先程まで仕事を終えて帰路についていた。
だのに、周囲の気配が変わったかと思えばいきなりなにもない部屋に閉じ込められた。
異能により閉じ込められたか、と辺りを見渡した時、
自分がいる部屋にもう一つの気配を感じた。
その瞬間、ドサリとその人物が床に落ちる。
「…貴女は」
クラシックの様に静かな心音と、独特の蠱惑的な雰囲気。
そして、僅かなシャンプーの香りと、強烈なまでの血の匂い。
政府上層部から捕縛命令が出ている少女、小泉Aが腹から血を流し倒れていた。
「大丈夫ですか！？」
「…油断した、あぁ…この部屋か。
…今回ばかりは、助けられたな…」
何処か皮肉のように呟く彼女の傷口は致命傷ではないとはいえ、放っておけば命に関わる。
彼は手早く傷口を押さえ、止血をする。
「…放っておけばいいのに」
「そういう訳にも行きません。それに私はこれでも警察です」
「…そっ、か…お父さんと同じ…」
そう呟いた少女は何処か遠くを見つめるような目で条野を見た。
一瞬、重なって見えた父の姿に、嘲笑するように唇を歪めたのだった。
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もこすけ(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえて良かったです。喜んでいただけてなによりです。異能がとても頑張ってますね…。探偵社より危ない、マフィアでした。 (2019年4月6日 15時) (
レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - リクエストありがとうございますヽ(*´∀｀)ﾉ♪めちゃくちゃ面白かったです！！そして姐さん、辞めてあげて！金色夜叉が倒れちゃう！あと龍ちゃん……羅生門で支えてたけど、逆に倒れた方が良かった気が…… 探偵社もヤバかったけど、マフィアの方もヤバイわ…… (2019年4月6日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます。夜叉白雪も苦労人(？)ですね。おそらく金色夜叉もお世話していたのでしょう。小泉、やることが女王化してます。犯人には安らかに眠って欲しいですね。 (2019年4月4日 19時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 夜叉白雪が可愛い！！てことは、金色夜叉もお世話してたのかな？そして、小泉さんと敦(虎)、カッコよすぎ！！もう、女王様だよ小泉さん！あと、犯人よ安らかに眠れ、、、お前はいい仕事をした！ (2019年4月4日 12時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 白織さん» コメントありがとうございます。学校、大変ですね。お力になれたようで良かったです。学校頑張ってくださいね。応援しております。 (2019年4月4日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年3月10日 20時
