【文スト】この世界と番外編 その十二

＊ ページ11

クスリ、それはポートマフィアがご法度としているもの。






「…一から説明しろ」







「私達は今日、ある荷物を運んで欲しいという依頼を受けました」






でもそれは荷運び業者に頼めばいい話。
何故、探偵社に頼んだのか。






「しかしあることを思い出したんです。
…最近、どこから出たのか不明なクスリがヨコハマで流行っていると。
その時期と、この資産家が大きくなり始めた時期はぴったり重なる」






「あ、確かに！」






賢治が手を叩いた。
時期は重なるし、クスリなら利益は大きい。






「つまり…手前らが運んでたモンの中身は…クスリってことか」






「はい、そこで疑問なのは、何故私達に頼んだのかと云うことですが…予想はつきます。
私達は知らなかったとはいえ、クスリに関わることになる」






「…成る程な、それネタにして脅そうって魂胆だったのかよ」







「探偵社は警察方面にも顔が効く。
それを嗅ぎつけての依頼だった、それが答えかと」






中也の眉間にシワが寄る。
ポートマフィアの関係者でありながら、クスリに手を出した。
それは背信、裏切りなのだ。






「…始末するんですね」







Aの質問は、疑問形では無かった。
中也は彼女の質問には答えず、部屋から出ようとする。






「待ってください」







「…んだよ」







「このまま彼を殺せば、マフィアにも飛び火しますよ」







中也はゆっくりとAの方を向いた。
彼女は懐からUSBメモリを取り出す。







「このメモリには、クスリの元締めの情報が入っています。
今からそこを締め上げて、資産家と手を切る、後は警察に任せればマフィアに"クスリ売買"の容疑はかけられない」







資産家はその後、警察の世話になるだろうがマフィアの報復は避けられる。






「クスリばら撒いた奴だぞ？始末すんのが掟だ」






「それでも、警察に目をつけられるよりはマシなはずです」







Aと中也がじっと見つめ合う。
もしここで中也がそれでも資産家を始末すると云えば、彼女は情報を警察に持って行くだろう。







「…あー、わぁったよ。取引成立だ」







Aがホッとしたように肩を落とし、メモリを渡す。






「手前…太宰みてぇになってきたな」






「最近それよく云われるのでやめてください…」







「手口の用意周到さがそっくりだぜ…」







その後、Aと賢治は依頼人の顔面に依頼料を突き返したとかなんとか。

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