【文スト】この世界と番外編 その九

＊ ページ27

「あぁもう…なんであんなの生み出すの…。
ただでさえ攻略難易度MAXなのに…あの異能者…許すまじ…」







「だ、太宰さん！顔が放送できない感じになってます！」







銀を子どものようにあやすA。
ちなみに、先程から芥川は見たことない顔で固まっている。
実の妹が敵の女によしよしされてる光景なんて、キャパオーバーしない方が不思議である。








「も、もう勘弁してください…」








とうとう耐えきれなくなった銀が顔を真っ赤にして座り込んだ。
太宰は頭の中であの異能者を三回は撃った。







「芥川君、今すぐあの子を気絶させてくれ。
遠慮はいらない、早くあの爆弾を止めてくれ」







「承知」








芥川の羅生門が的確にAの首を狙った。








「『羅生門、動くな』」








「あぁもう！本当便利で厄介な異能だよねぇぇそれぇぇぇ！！」








太宰が神々の国の首都を無効化すべくAに向かって走った。
すると、







「…妹みたいに、撫でてあげようか」








Aが異能という武器を使えない芥川の顎を指先で持ち上げていた。
太宰は悲鳴をあげて膝から崩れ落ちた。
ちなみに樋口は気絶した。







「貴様…」








睨みつける芥川に、Aは微笑む。
優しく、包み込むように手を伸ばした瞬間、Aの動きが止まった。







「…」







余裕そうな笑みを浮かべていた顔がどんどん青くなる。
白い顔が更に白く真っ青になり、芥川の顎を持ち上げる指先が震えている。







「まさか…異能が」







瞬間、Aは自分の拳銃を取り出すとそれをこめかみに押し当てた。
太宰はすぐに銃口を掴んで阻止しようとする。







「は、離してください…し、死なせて…いや…死ぬ、死んでやる…絶対に…！」







「落ち着いて、深呼吸をしなさい。ほらヒッヒッフーだよ」







「こんな生き恥晒して生きていたくない…！ロシアンルーレット式で死んでやる…！」







「それ全弾入ってるから確率は100%だよ。
その思いはよく判るがやめなさい」







元に戻り、しかも記憶が残った。
やってきたことを次々に思い出したAはガタガタ震えながら拳銃を落とした。







「あ、あ、あああああ！百回死ぬ！！」








とうとう膝から崩れ落ちて叫んだAに、太宰はホッとした。
いつものAだ。
頭が固くて高潔な普段の姿。






「死にたい…」







「はいはい、帰ろうね」

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