【文スト】この世界と番外編 その九

負けず嫌いに火をつけると ［涙痕様リクエスト］ ページ37

ある日の探偵社。
珍しく依頼もなく、いつもより遥かに早く仕事が片付いた。






「食らえ必殺技！」







「あ！」







「…なにしてるの」








来客用ソファーに寝転ぶ太宰と、彼と向かい合って白熱する敦、それを見下ろすA。
すると太宰はにっこりと笑い、手に持っていたゲーム機を見せてきた。
そこには、Winと表示され、太宰の勝利が映っていた。






「対戦型ゲーム、暇だったからね」







「…そんなゲーム機、いつ買ったんですか」







「待って待って待って無言でナイフ取り出さないで！！
別にツケ払いよりこっち優先させた訳じゃないから！！
この前解決した依頼で、その依頼主ゲーム会社のお偉いさんだったじゃない！！」







「…あぁ」







確かに、少し前、ゲーム会社の社長が依頼をしてきた。
人の良さそうな人で、依頼で社内に潜り込んできた産業スパイを見つけたお詫びとして
後日依頼料とは別にお礼をすると云っていた気がする。
静かにナイフを仕舞い込み、ゲーム機を見つめる。







「それが…これですか？」







「試作段階のだけど、面白さは保証するって」








どうやら自分のキャラを作り、それを操作するらしい。
レベルや装備も自分で上げていくもの。







「四人分あるからやってみない？」







ゲーム機を渡され、まじまじと見つめる。
その反応に、太宰がもしかして、と笑う。






「ゲーム、したことないの？」






「それがなにか？あまり慣れてないだけです」







「おっと睨まないで怖い」







ゲームは、経験がないわけではない。
ただ、ゲーム機なんて持ってなかったし、最後にやったのはいつだっただろうか。







「ここでキャラクターを作って、そう…そうやって」








とりあえず自分のアバターを作った。
途中から谷崎も参加して四人でやることになったのだが…。







『GAME OVER』







レベルも装備も弱く、初心者のAが勝てるはず無かった。
慣れてる太宰は兎も角、敦や谷崎にも負けた。







「まあ、気を落とさないで。
君にだって向いてないものの一つや二つ、あるさ」








ナチュラルに煽りながら笑いをこらえる太宰に、Aの方からブチッという音がした。
Aはゲーム機を掴んで立ち上がると、







「上等だ」








何処か不敵な笑みを浮かべて部屋から出て行った。
その姿に乱歩は「あー、面倒なことして」と呟くのだった。

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