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子供時代への旅 [ひにゃたこ様リクエスト] ページ11

ある日、母親に連れられ帰り道を歩く子どもを横目で見ていると、携帯が鳴り響いた。






「はい。……あぁ、いつものですね」







また太宰が川に飛び込んだらしい。
またいつものあれだ。
洗濯機を何回も回さないといけないのでやめてほしい。
ため息をついて、太宰が流れてくるであろう川を見下ろす。






「あんな人でも無邪気な子ども時代があるなんて信じられない…」







「あら、なら見てみましょうか?」








後ろから聞こえてきた、自分そっくりの声に振り返るより早く、視界が白くなった。
この世界に来た時のような浮遊感に襲われ、次に目を開けるとそこは…子どもがいた。
バッサリ切られた白い髪に、朝焼け色の不思議な瞳。
何処か怯えたような眼差しをした、小さな子ども。







「…え?」







「ひっ…あの、誰ですか…」







あまりの衝撃に声をもらすと、子どもは怯えたように肩を揺らした。
だってこの子どもはあまりにも…同僚の敦によく似ていたのだから。
しかも辺りを見回すと、そこは寂れた施設で、なんとなく敦が前に話した孤児院の光景と重なる。







『待って、これってまさか…』







その時、ポケットに違和感を感じて手を突っ込むとそこには紙が入っていた。
綺麗な字で、簡潔にこう書かれて。







『仲間の幼少期見学ツアー、制限時間は一人五分』







こんな暇つぶしの極みのような真似をしたのは、魔女ことAの母である雪。
偶然遊びに来た時、Aの呟きを聞いて思いついたらしい。
異能力の無駄遣い、有言実行、やることが限度を知らない。
そんな言葉が脳裏に浮かんでは消えた。






「これ、どうしろって…」






「あ、あのっ…ごめんなさ…」






何もないのに謝る姿に哀れみと悲しさを感じた。
ガタガタ震える子ども、敦の頭に手を伸ばすと、彼はビクリと肩を揺らした。
だが叩くわけでもなく、柔らかい手で撫でられたことに敦は目を見開いた。
顔を上げれば、美しい少女が自分を見つめている。







「そんなに怯えなくていい。…もう少しで貴方は自分の生きる意味が判るようになる」







それまで、待ってて。
そう残したAはスタスタと歩いて行って、消えてしまった。
その後ろ姿を敦は、ずっと見つめていた。







『危ない…窓から多分、院長と思われる男がすごい顔で見ているのに気づいて良かった…』






実は通報される危険から逃げたなんて、誰も気づかぬまま。

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もこすけ(プロフ) - 白織さん» コメントありがとうございます。あの二人は小泉も混ざるとかなりカオスになります。もう少し続くのでお楽しみに。 (2019年1月6日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
白織 - リクエストありがとうございます!最初からカオスで笑いました。これからどうなるのか楽しみです! (2019年1月6日 17時) (レス) id: a1083074eb (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます。中也さん、混乱して語彙力低下してますね。笑っていただけて良かったです。 (2019年1月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 中也の「…ごめんちょっと訳判らねぇや」で、吹いた(ノ∀≦。)ノ (2019年1月6日 17時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 玲衣さん» コメントありがとうございます。制服で夜の街を歩いたせいで太宰さんが死ぬほど職質を受けた事件です。危ない絵面に見えたのでしょう…。 (2019年1月4日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年12月9日 11時

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