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一悶着あったが、とりあえずナイフに塗った毒の話は流してもらえた。
Aは、身体強化されている猟犬の代わりにナイフを指先にあてた。







「…」







滑らせるようにナイフを横に引けば、ピリッとした痛みと共にぷくりと赤い玉が滲み出してきた。
白い指先が徐々に赤に染められていく。






「指、貸してもらえます?」






「…は?」






「まさか跪いて滴を受け止めろと?」







ポタリ、と白い床に赤い滴が落ちた。
いや、跪けとまでは云わない。
だって絵面的に…アウトだろう。






「じゃあ…」






「床に落ちたものを舐めろと云うならこちらもそれ相応の対応をしますよ?」






有無を云わさぬ条野の威圧に口を噤んだ。
そうこうしているうちにも指先から赤が落ちていく。
ふわりと、条野の鼻を血液の香りがくすぐった。







「手を貸してください」







条野の言葉にAは不思議そうな顔をする。
スッと差し出された条野の手に指先が赤くなった白い手を重ねる。
それを条野は強く、逃げないように掴んだ。
Aが咄嗟に拳銃を取り出すより、早く、条野は口を開けた。







「え」







パクリ、と条野の口がAの指を飲み込んだ。
ぬるりとした感覚が指先から伝わる。







「ッひ」








ピリッとした痛みと共に悲鳴がこぼれた。
いつもなら絶叫と共に拳ぐらい叩き込む凶行を起こすのだが、
相手が普通に殴っても傷一つつかない猟犬だということを瞬時に思い出し、
反射的にしたことは情けない悲鳴を出さないように反対の手で口を押さえた。
己の矜持の為、やることは条野をこれでもかと睨みつけるだけ。
それでも目が見えない条野には関係のないことだが。







「…ッ!」








暫くして、条野がゴクリと喉を鳴らすと、なにもなかった部屋に扉が現れた。







「ッ、もういい!離せ!!」







Aが叫ぶと、ようやく解放された。
Aはフーッフーッと肩で息をしながら猫のように条野を睨みつける。
その反応も、見るものが見ればただ唆られるものなだけだが。







「すみません、手荒な真似をしました」






「ッ…」






条野の謝罪に、それでも腹の虫が収まらないAは天井を睨み、床を睨み、そして顔を赤くしたまま舌打ちをした。
そしてそのまま足音を響かせて部屋から出ていく。
去り際






「次はこうはさせない!!」






と捨て台詞を残して。
三下のような台詞に、条野はクスッと笑いをこぼし。

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もこすけ(プロフ) - nino=sakuさん» コメントありがとうございます。怪談、いかがでしたか。実際に遭遇したくはないですね…。 (2019年3月26日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
nino=saku(プロフ) - 主人公の怪談夜中に読んでたので普通に怖かったですw (2019年3月26日 0時) (レス) id: 2561bedadd (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます。わざわざ有難いお言葉感謝します。もう少し続きますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト受けてくださって本当にありがとうございます!作品とても楽しみです! (2018年12月7日 14時) (レス) id: 9fddac5d14 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - みぃちゃん,mさん» コメントありがとうございます。小泉のボーカル、見たいてますね。これから登場しますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年10月28日 18時

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