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太宰に別れ話を切り出したら洒落にならないくらいの雰囲気になった。
男女交際ってこんな修羅場になるものなのか？
『もっとこう…穏やかで静かなものだと…』
恋愛経験ゼロのAは、男女の修羅場なんて知るはずもない。
別れ話を切り出したのも、太宰が自分に気などないと思っていたから。
なのに…あれだ。
『どうする？こちらに気持ちがないのに交際を続けるのも申し訳ない。
だがあれは…生命の危機を感じる』
遠い目になってしまう。
公園の手摺に寄りかかり、海の方を見遣る。
海風が心地よいのだが、まだ舌が痛い。
何故だろう、あぁそうだ、パスタにタバスコ一瓶ぶっかけたからだ。
「そもそもあの人の好きな人って…？」
好きな人なら心中なりなんなり誘っているのでは？
自分は出会った始めに誘われたきり、声はかかってないが。
ううむと考えているとひたりと頬に冷たい感覚がして悲鳴が上がる。
「はい、お茶」
「え、あ…ありがとうございます…」
ニコリと笑う太宰からお茶を受け取り、ぎこちない動作で飲む。
相変わらず読めない表情だ。
ゴクリとお茶を飲み、躊躇いがちに口を開いた。
「あの、太宰さん」
「なんだい？」
本当に貴方が見ているのは誰？
私の先に、何を見ているの？
「貴方は…誰を愛してるのですか」
この時、彼女には悪意なんてなかった。
ただ純粋に、血の繋がらない誰かから愛されるということを知らなかった故の言葉。
以前の世界で、彼女の内面を見るような者が一人でもいればここまで無知ではなかった。
太宰はその言葉に、怒り、悲しみ、そして哀れみを滲ませたような顔をし、Aの手を掴んだ。
「ッ、痛い、…太宰さ」
「来なさい」
あまりに強く掴まれて、太宰を睨むが彼はこちらを一瞥すらせずに足早に歩き出した。
なんで、そんなに怒った顔をするの。
かつて芥川に腹を斬り付けられた時のような顔に、何も云えなくなる。
そして路地裏まで連れて行かれ、そのまま壁に追い込まれた。
骨が軋むほど強く両手を掴まれ、抵抗しようにも力の差は歴然だった。
「…なんで」
絞り出すような、掠れた声だった。
「なんで、君は判らないの」
愛してるのに。
その言葉に驚愕から言葉が飛び出るより早く、
Aの赤い唇に、太宰が噛み付くように口づけをした。
それは、一瞬のことだった。
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もこすけ(プロフ) - nino=sakuさん» コメントありがとうございます。怪談、いかがでしたか。実際に遭遇したくはないですね…。 (2019年3月26日 18時) (
レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
nino=saku(プロフ) - 主人公の怪談夜中に読んでたので普通に怖かったですw (2019年3月26日 0時) (レス) id: 2561bedadd (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます。わざわざ有難いお言葉感謝します。もう少し続きますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - リクエスト受けてくださって本当にありがとうございます！作品とても楽しみです！ (2018年12月7日 14時) (レス) id: 9fddac5d14 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - みぃちゃん，ｍさん» コメントありがとうございます。小泉のボーカル、見たいてますね。これから登場しますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年10月28日 18時
