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少女が消えた世界の話 [朧月様リクエスト] ページ41

「…酷い目にあった…」





昼、公園のベンチに座り、Aは疲れたように肩をバキバキと鳴らした。
遡ること数時間前、大怪我をした。
異能犯罪者を捕らえるのに、自分も参加したのだが
そこで犯人が暴れ、運悪く切りつけられてしまったのだ。
危険だから待てと云われていたのにも関わらず、人質に子供がいたせいで気持ちが焦った。
結果、犯人全員逮捕し人質も解放されたがかなりの怪我だったせいで
与謝野から特別コースの治療をされ、今さっき説教が終わったところだった。





「別に死ぬほどの怪我じゃないんだしあそこまで怒らなくても…」






与謝野からは「もっと自分を大切にしな!」と云われるが、
正直、今まで他人から必要とされることが無かったせいか無理はしても仕方ないと思っている。





「危ないラインは見極めてるつもりだけど…」





「あら、本当にそうでしょうか?」





突如、背中合わせに置かれたベンチから自分とよく似た声が聞こえる。
驚いて振り向くと、そこには美しい笑みを浮かべた雪が座っていた。
母だけど、母じゃない、ひとりの魔女。






「…なにか用でも?」






「いえ、久しぶりに観光でもしようかと思ったら
貴女の悲鳴が聞こえてきてつい…」






聞かれていたのか、と思っていると雪はフッと微笑んだ。






「貴女、随分無理なさいますね」






「…ちゃんと死なないように判断はしてる。
それに少しくらい無理でもしないと、この世界は甘くな…」






「本当に?」






底なしの闇のような紫の目がAを見つめる。
同じ顔のはずなのに、何故か恐怖を感じた。






「見せてあげましょうか?貴女の知らない世界を」






すっと、白い指先が重ねられる。
雪は微笑んだまま、パチンッと指を鳴らした。
次の瞬間には、二人の少女の姿は消えていた。







「ッ、いきなりなに…」







浮遊感に包まれ、目を開けるとそこには見慣れた景色が広がっていた。
雪により転送されたはずだが、どうにも景色は変わらずヨコハマのまま。






「なにも変わってないけど…」






「あ、これ着てください。顔がバレると大変なので」





渡された黒いフード付きのパーカーに、Aは訝しげな顔をする。
すると、つばの広い帽子を被った雪はフッと赤い唇で笑った。






「この世界では、貴女は死んでいるのですから」






あり得ない言葉にAは目の前の少女を見つめ、は、と乾いた声をもらした。

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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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