【文スト】この世界と番外編 その七

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後ろでしゅるり、と服のリボンを解く音がする。
続いて、布切れの音と、緊張したような吐息も。
艶かしい、その表現がよく合う。
元々黒が似合うから、きっと黒いメイド服はさぞや似合うのだろう。
そう思っていると、





「いい、ですよ…」





ゆっくり後ろを向いて、太宰は「わぁお」と口を押さえた。
絶景、その言葉が自然と出てくる。






「凄く…可愛い」






「ッ！あんまり…見ないで…くだ、さい…」






真っ赤な顔でAは大きく開いた胸元を隠した。
かなり短いフリルのスカァトから普段では滅多に見れない生足が覗き、高めのヒールもよく似合っている。
羞恥心から真っ赤になる姿も愛らしさすらある。






「可愛いじゃないか、ほらもっとよく見せて」






「は、ぁ？着たんだからもう終わりでしょう。
あとニヤニヤしないでください、腹が立つ」






「いやね、お題をよく思い出してみたまえよ。
メイド服を着て、お仕事をするんだよ？
メイドさんの仕事ってなにかなぁ？」






「邪魔者の排除」






「それはちょっと違うね」






ニンマリと笑う太宰にAの顔がひきつる。






「『お帰りなさいませご主人様』って云うの」






「…死ぬ」






護身用の拳銃を取り出すAを慌てて止める。
彼女は真っ赤な顔でなんでそんな台詞、とか、信じられないとか呟くがそれが一番マシな内容だろう。
しばらくすると赤い唇を震わせて言葉を紡ぐ。






「く…お、お…」







「おぉ？」







楽しげに笑う太宰に、Aは吹っ切れた。






「お帰りなさいませご主人様！！」






「はい、合格」






ふーふーと、肩を揺らし、恥ずかしさから涙すら浮かべて睨みつけてくるツンデレメイドに太宰は微笑む。
可愛い、いじめがいもあるし何より楽しい。
これなら毎日この部屋に閉じ込められたいくらいだ。
だが流石にいじめすぎたか、適当に機嫌を取ろうとした瞬間、






「もういい、国木田さんに云いつけてやる…」






「え」






やばいと思った時には彼女はメイド服のまま扉に手をかけ、真っ赤な顔で太宰を指指して宣言する。






「土にお還りになれ大馬鹿ご主人！！」






珍しく乱れた表情が可愛いと思っていると、Aは部屋から出て行ってしまった。
暫く経って、満足したように深く息をはいた太宰は置いていかれたAの服を持ち、部屋から出る。
その瞬間、国木田の拳骨が飛んでくるとも知らずに。

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