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「へぇ、二人は兄妹なんだ。
てっきり付き合ってるのかと思ってた」






「まあ、Aさんお上手!!」





病室できゃっきゃっと女子トークを繰り広げるのはナオミとA。
その傍らでは妹に抱きしめられて赤い顔する谷崎が。





「ほら、ここなんて兄様とそっくりですの。
ね、ここら辺、ここら辺が」





「ナオミやめて!!Aちゃんもそんな微笑ましそうに見ないで!!」






「仲が良いですね」






「やめろ貴様ら!!Aに勘違いをさせるな!!」






以前の彼女なら引いた顔で「危ない兄妹」ぐらいは云いそうだが、
記憶がなくて柔らかい性格のせいかあっさりと信じてしまった。






「本当に、なにも覚えてないの」






「うん…ごめんね、なにも覚えてない」






鏡花がそう、と肩を落とす。
賢治もなにか思うところがあるらしく、頬をかいた。






「でも、少しずつ思い出すから」






ニコリと笑うAに皆はコクリと頷いた。
Aはそんな皆の反応にありがとうと返す。






「そうですわ、Aさん、喉乾きません?
ナオミ、なにか買ってきますわ」






「あー…じゃあ、ミルクティーお願い」







そこで敦はあれ、と首を傾げた。
以前のAなら珈琲やお茶など、苦いものを好んでいた。
それに、Aが紅茶を飲むのは見たことがない。
やはり、記憶が失われると好みも変わるのだろうか?






「ミルクティーですね、判りましたわ」







兄を連れて、ナオミは病院の購買に行った。
仕事があるからとその後国木田も退室し、鏡花と敦も戻る時間となった。






「じゃあ、また来るから」






「うん、また」







ベッドの上から手を振るA。
病室の扉を閉めると、部屋にはA一人になった。






「ばいばい、虎の子と、元暗殺者の子」






その声は風に掻き消され、Aの表情は見えなかった。
彼女はふと、布団の中から『理想』と書かれた手帳を取り出した。
それをめくると、ふっと笑う。







「素敵な理想…武装探偵社、か…」







すると、廊下からパタパタとナオミの足音が聞こえたため、
Aは手帳を再び布団の中に隠した。






「Aさん、ミルクティーです」






「ありがとう、ナオミちゃん」






「もう、ナオミで構いませんのに」






他愛もない会話をしながら、Aはミルクティーのパックにストローを刺した。
その音は何故かナイフが肉に刺さる音を連想させた。

*→←抜け落ちた記憶の意味[夜叉夜叉様リクエスト]



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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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