【文スト】この世界と番外編 その七

巷で話題の魔法使い ［ただの本好き様リクエスト］ ページ18

「えー、皆様見えますでしょうか、魔法使いです、人が空を飛んでます」






そんなニュースキャスターの話を聞いて、茶を吹き出さなかったのは勲章ものだと思う。
むせながらテレビの方を向くと、そこにはビル街の空中を悠々とホウキに跨り飛ぶ女の姿が。
彼女はカメラに気づいたのか手を振ると、そのまま空に消えてしまった。







「なんだこれ…」







「巷で話題の、空飛ぶ魔法使いだって」







仕事をサボって先程国木田に締め上げられていた太宰がそう云う。
魔法使い、あの姿だと魔女とでも云われそうだが、あれは魔法使いの類らしい。







「でも、あそこまで大っぴらに異能使うのはあまり良くないのでは…」








「そう、そこで政府からの依頼だ。
この魔法使い、探偵社で調べて欲しいってさ」







成る程、その依頼のせいで朝から社員達が出払っているのか。
また面倒な依頼が、とため息をつく。







「それで…何処から調べましょうか」







「そうだねぇ…うーん」







暫く考え込んでいた太宰はふと、思いついたように口角をあげた。







「ポートマフィアの縄張り付近、探してみようか」







「…あの魔法使い、なにやらかしたんですか」







Aの呆れたような声が社内に響いた。
丁度その頃、マフィアの縄張り付近ではマフィアの黒服達が慌ただしく駆け抜けていた。
彼等は皆、通信機片手に誰かを探している。







「居たぞ！！」







「うえっやば」







そこまで広くない路地裏を、異常なスピードで通り抜けるホウキ。
そこに跨る女、巷で話題の魔法使いの顔は焦りつつも何処か楽しげだ。






「銀、そっち行ったぜ！」







「…」








「ひゃあ！あぶな！！」








後ろからでたらめに撃っていたと思っていた青年が暗闇から突如現れた細身の人物に叫ぶ。
誘導されていたと気づいた時には、鋭い刃物が首筋ギリギリまで迫っていた。
それを間一髪躱すが、次の瞬間には初老のマフィアが構えており、急上昇して攻撃から逃げる。








「チッ、逃げられちまう」







「案ずるな…彼が来ている」







若いマフィア、立原は逃げ回る魔法使いを見ながら、
その前方で黒い影が揺らめくのを見て納得した。







「兄人か…じゃあ俺ら居る意味ねぇじゃねぇかよ」







肩を落とした立原は、その時一瞬何故か寒気を感じた。
それがトラウマの少女が近くにいるからなど、知る由もなく首を傾げた。

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