【文スト】この世界と番外編 その七

＊ ページ16

温泉でもめにもめ、上がる頃にはすっかり逆上せてしまった。
暑くて暫く壁にもたれかかっていると、鏡花がボソッと「大人の色気」と呟いていた。






「…で、当然のようにこっちに来てるわけか」







夕食を終え、部屋に戻ると当然のようにエリス達が来ていた。
ここで叩きださなかったのは、夕食の際、酔った与謝野が国木田には絡むのを止めたり、
太宰が中也を揶揄いに行くのを止めたり、敦と芥川の衝突を異能で止めたりして疲れていたからだろう。






「寝るまで時間があるからのう。折角だから今後の話でもせぬか？」







「本音は」







「びっくりするほど暇なの」







エリスが慣れない浴衣を着てAに抱きついた。
成る程、暇だから来たと。
それでいいのかマフィアよ、と思ってしまう。







「はぁ…私は疲れたから休んでる。各自自由に過ごせば…」







「枕投げしたい」







鏡花の提案にエリスは目を輝かせた。
与謝野とナオミも異論は無く、鏡花を可愛がっている紅葉は当然やる気だ。
こうなると立場的に樋口と銀もやる流れになる。







「…私はやらないから」







勝手にどうぞ、と女性陣のブーイングを受けながら少し離れた窓際で本を開く。
これ以上旅行で疲れたくない、そう思っていたのだが。






「鏡花、アンタ夜叉白雪でぶん投げてみなよ」







「これは銃の使用ありですか」








物騒な台詞が聞こえてきて、口元が引きつった。
何故異能を使う、何故銃を使う、本気すぎる。
流石に止めようと本を閉じた時、







「あ」







凄まじい勢いの枕がAの顔面に直撃した。
金色夜叉が打った枕がポトリと落ちる。
そして訪れる、沈黙。







「…すまぬ、A」







「A、アンタ生きてるかい」







その声に応えるようにゆらりと立ち上がったAは近くにあった枕を掴むと、
野球選手のように枕を掲げ、そして勢いよくそれを放った。







パァン！！








見事に枕が直撃した金色夜叉は、そのまま後ろの襖を外して吹っ飛んだ。
流石は父親譲りの身体能力の高さだ。
恐ろしい威力に樋口が「豪速球」と呟く。







「かかってこい、返り討ちにしてやる」







Avs女性陣、バトルの鐘が鳴る。
その後、枕投げとは思えないガチバトルに発展し、
結果男性陣が止めに来て更に被害が拡大することになるとは誰も思わなかった。
次の日Aは「旅行は今度から一人で行く」とぼやいたらしい。

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