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ページ12

あの人は高潔で、暴力での解決は望まない。
でも私の力は支配の為に、暴力の為にある。
それでもこの人を救いたい時…どうすればいい?






「…」






気づくと深夜に目が覚めていた。
ベッドから起き上がり机に視線を向けると、突っ伏したまま眠っている巳之吉がいた。







『このまま寝たら体を壊すのに…』







毛布を手に取り、彼の肩にそっとかける。
巳之吉の顔には髪がかかり、彼は不快そうに眉に皺を寄せた。
それにクスリと笑い、髪に触れようとする。
その瞬間、






『嫌だ!死にたくない!!』







『なんで、なんでこんな…』







『この…人殺し!!』







全身から血の気が引いていくのが判った。
この手は、汚い。
なんで忘れていたのだろう。
自分は多くの人を不幸にした魔女で、ここにいることすら許されないのだと。







「ご、めんなさい…」







触れることすら、許されないのに。
怯えるように巳之吉から遠ざかり、そのまま部屋の扉を開けた。
外に飛び出し、雪の降る道を逃げるように走っていく。







『私は汚い、この人の側にいてはいけない、消えて、居なくならないと』







「雪!!」






物音で気づいた巳之吉が自分を追いかけてきた。
来ないで、貴方を汚したくない。







「やめて…私は貴方といる資格なんてないんです」







「雪」







「私は貴方が考えているほど綺麗じゃない」







「雪ッ」







「だから、私を忘れて、貴方は貴方の運命を」







「雪!!」







気づけば、巳之吉の手が雪の白い手を掴んでいた。







「俺は、お前がどんな人間でも受け入れる」






嘘、拒絶する。







「どんな苦難も耐えてみせる」







逃げ出すに決まってる。








「だから…泣かないでくれ」







「…なんで」







雪の頬に伝うのは、涙。
どうして貴方は、こんな私に優しくしてくれるの?








「なんで、私は…」








「雪」








雪が降る中、男は哀れな魔女を抱きしめる。
王子になれなかった男は、一人の魔女を愛した。







「俺と、共に生きてくれ」







「…はい」








その手を振り払えなかった。
情けなく彼にしがみつき、泣いた。
誰にも祝福されず、望まれない運命を二人は選んだ。
遠い地に逃げ、そこで子を産み、魔女が死ぬまで二人は逃げた運命の中でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。







『これは、誰も知らない魔女の物語』

柔らかいと得するらしい [シアトル様リクエスト]→←*



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もこすけ(プロフ) - ReiLeiさん» コメントありがとうございます。そんなに読んでくださりましたか。とても嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年12月26日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ReiLei(プロフ) - 3週目するくらい面白い。 (2018年12月26日 17時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 朧月さん» ありがとうございます。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - リクエストありがとうございました!これからも更新を楽しみに待っています\(^^)/ (2018年10月28日 15時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 嬉しいお言葉ありがとうございます。こちらもリクエストをいただき、こうして書けることがとても楽しいです。皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします。頑張ります。 (2018年10月27日 16時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年9月29日 19時

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