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やっと岸に上がれた時、ゲホゲホと水を吐きながら河川敷に倒れこんだ。
服も髪もびしょ濡れで非常に気持ちが悪い。







「冷たい…寒…」







ふと、川の方を見てみると猟犬らしき影は見えない。
まあ生きているだろうと、息を吐く。







「つか、れた…」








ごろんと上を向くと夕焼けが見えた。
足はまだ川に浸かっており、流れる水の感覚がする。
帰ろうと、起き上がろうとする。







「やってくれましたね」








上を見なくても判る。
間違いなくあの男だ、帰りが早い。








「まさか道連れにされるとは思いませんでしたよ」







嫌々ながら目を向けているとそこには私服をびしょ濡れにした条野が立っていた。
水も滴るなんとやらと云うがそんなジャークを云う勇気はない。
すると、彼は来ていたびしょ濡れのコートを体に投げた。








「嫌がらせか」








「違います、そのままだと透けますよ」








透ける?視線を下に落とすとシャツが濡れ、下着がうっすら透けていた。
ベストは暑いので来てこなかったのが裏目に出たのだ。
反射的に胸元を手で隠す。








「私は見えませんが…観衆に見せるつもりですか」








「…ありがとう」







だが元を辿れば原因は彼なので謝りはしない。
微妙な空気が流れていると、防水仕様の携帯が鳴った。







「はい、はい、…か、川に男女が飛び込んだらしい?
へぇ…太宰さんじゃないんですか?」







その言葉に条野がなにか云いたげな顔をする。
適当に電話を切り、そして暫くの間静かになった。








「…帰る」








「濡れたままですか?」








「これ返す、…人気のない道通るからいい」








「そうですか…おや?」








何かが聞こえた条野はふと橋の上を向く。
不思議に思いつつAもそちらを向くと、固まった。







「太宰さ…あ」








太宰が橋から落ち、川に消えた。
つまり、いつものやつだ。







「ああああああの人は本当に!!」








条野から借りた服を返し、そのまま川に戻る。
目を離すとすぐこれだから油断ならない。
川に消えていく少女に条野は肩を落とすと濡れた服のまま何処かへと消えた。








「あ…携帯水没した」








そんなことを呟きながら。

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Ohata(プロフ) - 泣いて……いいですか?(織田作ぅ!!) (2022年8月22日 23時) (レス) @page11 id: 9a3ac744f2 (このIDを非表示/違反報告)
ハック - おっ織田作さんぁぁぁぁぁああぁあああああん (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0c5e7e9ecb (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 砂色のコート、赤い髪…お、おださっ…ああああああああああああっっ!!(号泣) (2021年1月1日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まつかわもちさん» はい、アナベルをモデルにして少し違うものにしております。 (2018年9月30日 11時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
まつかわもち(プロフ) - 呪いの人形って、もしかしてアナベル……ですか? (2018年9月30日 10時) (レス) id: 895f1d2de6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年8月8日 15時

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