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「…なんじゃ彼奴はまだ来ておらぬのか!!」
「はい、まだのようです」
月明かりに照らされる森の一角、開けた場所で軍服を着た幼女がキィッと怒る。
その姿は幼子そのものだが、彼女の足元には制圧した屈強な男が瀕死で転がっている。
「条野、お前が探してこい」
「えぇ…私ですか…」
「彼奴は女だぞ!何かあったらどうする!」
「この前相手の顎蹴り砕いたのご存知ですよね」
ここに不在の少女の先輩である条野は副隊長である幼女、子の機嫌を損なわないように答える。
その後ろからがははと豪快に笑いながら隊長である福地が現れたので「更に煩くなった…」と条野は頭を抱える。
「彼奴も新人だ、大目に見てやってくれ子君」
「はぁい!勿論です隊長!」
「納得いかない…」
もう慣れているがこの職場は騒音とストレスだらけで胃が痛い。
しかもこのタイミングで条野が一番嫌いな隊員が生きているのかも判らない犯人を二人引きずって戻ってきた。
「終わった」
「鐵腸さん…無駄に血液の匂いを撒かないでくれます?非常に不快です」
「俺は流血していないが」
「貴方が捕まえた方達の血ですよ。瀕死じゃないですか」
「なんだ、まともに生きてる奴がおらんのか?」
福地が捕らえた犯人達を見渡す。
捕縛命令と同時に切り捨てても構わないとの命令だったので誰一人手加減をしていない。
鐵腸や子の獲物なんて生きているのが不思議なくらいだ。
「まあ彼奴ならほぼ無傷で連れてくるだろう。なぁ条野」
「何故私に振るんですか」
「お前が拾ってきたんだろう」
「まあ…そうですが…」
まるで犬猫のような表現だが間違っていない。
河川敷で倒れているあの少女を拾ったのは自分だし、彼女の先輩役をやっているのも事実だ。
「そう云えば…この前彼奴を怒らせたな」
「鐵腸さん貴方何したんですか」
「食事に行っただけだが?」
「それが原因ですよ馬鹿」
条野がため息をつき頭を抱えていると、森の奥から聞き慣れた足音が聞こえてきた。
…何かを引きずる音も。
「うわ…スプラッタ…」
「A!遅いぞ!!」
子の声に少女、小泉Aはすいませんと頭を下げた。
帽子の下から、猟犬部隊、新人であるAの長い髪がさらりとこぼれた。
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Ohata(プロフ) - 泣いて……いいですか?(織田作ぅ!!) (2022年8月22日 23時) (レス) @page11 id: 9a3ac744f2 (このIDを非表示/違反報告)
ハック - おっ織田作さんぁぁぁぁぁああぁあああああん (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0c5e7e9ecb (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 砂色のコート、赤い髪…お、おださっ…ああああああああああああっっ!!(号泣) (2021年1月1日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まつかわもちさん» はい、アナベルをモデルにして少し違うものにしております。 (2018年9月30日 11時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
まつかわもち(プロフ) - 呪いの人形って、もしかしてアナベル……ですか? (2018年9月30日 10時) (レス) id: 895f1d2de6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年8月8日 15時