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薄暗い路地を一人、歩いていく。
表通りから離れるほど喧騒から離れ、闇が近づいてくる。






「…そろそろ出てきたらどう」







何もない空間に話しかける。
ここには自分と"相手"、二人しかいない。
奴は絶対に現れると確信していた。








「…やはり判っていたのですね」








何もない空間が歪み、一人の男が現れる。
まるでカメレオンのように、男はそこに立っていた。







「透明化の異能者…成る程、それなら姿が見えないのも不思議じゃない」







「ふふふ…貴女は私の存在が判っていた…あぁ、貴女と言葉を交わす事を何度夢見たことか」








不気味に笑うその姿に、あの手紙の相手は間違いなく彼だと確信する。
じわりと滲む薄気味悪さに肌が震えた。








「貴女を一目見た時からなんと美しい人だと思っていました…。
白雪姫のような美しさ…優しげなその声はなんと心地よいのでしょう…」







熱がこもった目で見てくる男に一歩後ずさる。
今度は気味の悪さと云うより、嫌悪感が湧いてきた。







『恋は盲目と云うが…これは重症だな』








美しいとか優しいとか、本当に"小泉A"という人間を知っていたら簡単に口にしたりしない。
優しいなんて言葉、自分に向けられるには嘘に塗れすぎている。








「その目で私だけを見てください、その声で私の名前だけを呼んでください」








「…悪いけど、私は知らない奴を好きになったりしない」








「…やはりあの者達が居なくなれば良いのですか」








男の声が低くなる。
確かに、仲間という存在が居なくなれば自分は拠り所が無くなる。
だが、だからと云って…






「アンタを好きになるほど落ちぶれるつもりはないでね」






パチンッと指を鳴らす。
瞬間、裏路地の建物に隠れていた敦と鏡花が飛び出してくる。
敦が両腕を掴んで地面にねじ伏せる。
動こうとする男の首筋に鏡花の冷たい短刀が当てられた。






「…やはり罠でしたか」







「一人で来るわけがないだろう?」







昔の自分なら一人で解決していた。
だが今は違う。







「さて、あとは軍警に任せようか。…できれば一発いきたいところだったけど」







「抑えて…」







「…こんなの認めない」








男が呻いた瞬間、ぷしゅうとガスのようなものが広がる。
咄嗟に口を押さえて後ろに飛びのくが、まともに食らった二人はそのまま倒れる。
ゆらりと立ち上がる男に、小さく舌打ちをした。

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Ohata(プロフ) - 泣いて……いいですか?(織田作ぅ!!) (2022年8月22日 23時) (レス) @page11 id: 9a3ac744f2 (このIDを非表示/違反報告)
ハック - おっ織田作さんぁぁぁぁぁああぁあああああん (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0c5e7e9ecb (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 砂色のコート、赤い髪…お、おださっ…ああああああああああああっっ!!(号泣) (2021年1月1日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まつかわもちさん» はい、アナベルをモデルにして少し違うものにしております。 (2018年9月30日 11時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
まつかわもち(プロフ) - 呪いの人形って、もしかしてアナベル……ですか? (2018年9月30日 10時) (レス) id: 895f1d2de6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年8月8日 15時

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