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硬い音を立てて床に落ちる硝子。
あそこに立っていたら間違いなく鏡花は危なかった。







「鏡花、大丈夫?」







呆然としていた鏡花はコクリと小さく頷く。







「なんだい今の…なんで割れたんだい」








いきなり割れた硝子の原因が判らない一同は窓の外に視線をうつすが誰もいない。







「鏡花ちゃん…硝子割れる前になにか云ってたよね」






「…気配を感じた。
寒気のような妙なものを…それで…」








「鏡花、もういい」







途切れ途切れ答えていた鏡花の目元に触れ、目を閉ざす。
これ以上は鏡花の負担になるし、それ以上に"奴"に目をつけられる可能性があった。
だって、奴は先程から鏡花をじっと見つめている。






「…ビルに人影が見えました。恐らく異能者の類では?」







その存在を知られないように嘘をついた。
国木田は「それならそうと早く云え」と、修理費の計算を始める。
鏡花は与謝野に連れられ、医務室に消えた。







「…A」








ただ一人、乱歩はなにかを確信したような目でこちらを見ていた。
だがAが何も云うなと云わんばかりの目をしていたので、彼はため息をつき、自分の席に戻ると飴を咥えた。







『しかし…どうにかしないとな』








直接的に手を出してくるとなると、早急な対処が必要だ。
あの悍ましいものは今も部屋を徘徊し、誰かに危害を加えようとする。
今現在、社に"彼"が居ないのは唯一の救いだろう。







『太宰さん…帰ってきたらアウトだな』








今頃美女でも口説いているであろう、太宰。
彼は早い話、幽霊ホイホイだった。
ジサツなんて真似するせいか、背中にまあ色々と背負っている。
よくそれで生きていられるなと云うほどのものも。







『でも…半日もするとそれらは消えている』








あれほどの霊に憑かれているのに、彼は生きているしなんだったら霊が消えている。
祓ったわけではないのに、何故。







「やぁ、おはよー。ってなんだいこれ」








そんなことを考えていると、能天気な声が響いた。
そこには全身ずぶ濡れの太宰。
まずいと思うと同時に、霊の目がギョロリと太宰の方を向いた。
黒い手が彼に伸ばされる。







「ッ、太宰さん!」








間に合わない、そう思った瞬間、砂色のコートが目に映る。







『待ってくれ』







黒い手を阻むように、赤茶色の髪の男性が現れる。
その人は、まるで太宰を守るようにそこに立っていた。

*→←招かれざる客 [シアトル様リクエスト]



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Ohata(プロフ) - 泣いて……いいですか?(織田作ぅ!!) (2022年8月22日 23時) (レス) @page11 id: 9a3ac744f2 (このIDを非表示/違反報告)
ハック - おっ織田作さんぁぁぁぁぁああぁあああああん (2021年8月25日 17時) (レス) id: 0c5e7e9ecb (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 砂色のコート、赤い髪…お、おださっ…ああああああああああああっっ!!(号泣) (2021年1月1日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まつかわもちさん» はい、アナベルをモデルにして少し違うものにしております。 (2018年9月30日 11時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
まつかわもち(プロフ) - 呪いの人形って、もしかしてアナベル……ですか? (2018年9月30日 10時) (レス) id: 895f1d2de6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年8月8日 15時

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