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自分を見下ろしてくる男は不思議な雰囲気を纏った人物だった。
さっきまで誰もいなかったはずなのに、いきなり現れた男にAは目を丸くさせる。








「あの、どちら様で…」








「儂か?儂は只の隠居爺だ」







成る程、全く意味が判らない。
変な人だなと思いつつ、先ほどの言葉を思い出す。








「どうして私の名前を」








「ん?あぁ、風の噂で聞いた」







「風の噂…」








「悩みが多いようじゃな、若者よ」







「…別にそんなことないです」








「はー、予想以上に面倒な娘じゃのう」







いつものように馴れ合おうとしないAの態度に男はめんどくさそうにため息をついた。
まるで以前から自分のことを知っているように。








「面倒って…」








「面倒じゃ面倒。お主によく似た娘を知っておるが其奴はもっと楽に生きておったぞ」







「…?」








「世界中に嫌われたような境遇にも関わらずそれら全てを嘲るように笑い、
挙げ句の果てにはそれすらも玩具にするような娘じゃ。
花のような美しさがあったがあれは人喰い花より恐ろしいものよ」







全てから嫌われた少女。
自分より生きにくいであろう少女の話に、唇を噛み締めた。







「かつての他人の言葉など忘れてしまえ。
気にするだけ時間の無駄じゃ、今を見据えて生きよ」







「…判ってます」






その言葉は胸にストンと落ちてきた。
正論だ、彼奴らの言葉に悩むなんて今が霞んでしまう。
過去の呪縛は中々解けないが、それでも今があればいいと、男の言葉を聞いて改めて思った。
すると、男はこちらをじっと見つめ肩を落とす。








「なんじゃ、彼奴の娘だと聞いておったが愛想がないのう」







「…え?」








「いや、あれは愛想笑いだったか。
それにしてもよく似ておる、流石に驚いたのう」








「え、ちょっ、それどう云うことで…」







「じゃが彼奴は猫相手に大真面目な相談をしたり猫言葉を話したりはしなかったぞ」








「…は」








聞かれた?まさかあれを聞かれた?
と云うよりこの人の話はまさか…
呆然としていると男の体がぐにゃりと歪んだ。
そして…一匹の三毛猫になる。







「にゃあ」








三毛猫は去り際の挨拶をすると、トテトテと何処かへ消えてしまった。
数秒後、今までの話を全て聞かれていたと理解したAの絶叫が辺りに響き渡ることになる。

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もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時

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