* ページ45
自分も同じように拉致された少女は黒蜥蜴の銀だった。
「顔色悪い…それに足、血が滲んでる」
「大丈夫、です、後ろから攻撃された時、掠っただけですから…」
腕を見てみると確かに傷は浅かった。
でも彼女の様子から察するに原因はそれだけでは無さそうだ。
「…毒か」
「恐らく…」
確かに、黒蜥蜴の手練れを拉致するのに下手なことをすれば逆に殺される。
自分は薬だったが銀は毒だったようだ。
命に関わるようなものではないと思うが保証はない。
「傷口、ちょっと見せて」
腕は動かせない為、体を前のめりにして傷口を見てみる。
どんな毒でも早めに出さないといけない、と以前に毒付きのナイフで怪我をした自分を治療(解体)した与謝野は語っていた。
「…ちょっと我慢して」
「え…」
銀の了解も得ずに傷口に口をつけた。
痛みに呻く声が聞こえるが、躊躇わず傷口を吸い上げる。
口に血の味と共に僅かな苦味が広がる。
「ッ、痛ッ…」
「…ッん」
傷口を吸う艶かしい音が響いた後、漸く銀の足から唇が離れる。
赤い糸がとろりと垂れた後、Aは口の中にある血をべっと吐き出した。
「にが…」
口が拭えない為、彼女の口の周りは血でべったり赤く染まっていた。
痛みから肩で息をしていた銀が口を開く。
「び、びっくりしまし、た…」
「ごめん、毒を取る方法がこれしかなくて」
「いえ…助かりました…ありがとうございます…」
「ん」
同性とはいえ、あまりに大胆な行動に銀は赤面した。
Aと銀はほとんど面識がない。
だが今の行動で銀の中のAが大胆すぎる恩人に変わったのは明確だろう。
少し前まで同僚の立原を容赦なく窓から落とした人物という認識でしかなかったが。
余談だが暫く彼は「落とされる、あいつに落とされる!!」という寝言を連呼していた。
「まずっ…」
口をもごもごさせ、Aは顔を歪めた。
そりゃあ吸血鬼でもない限り血なんて不味いだろう。
それに毒も混ざっていれば尚更。
「しかし…相手はなに考えてるんだか」
「…そうですね」
相手は一つ大きな間違いをした。
間違っても探偵社とマフィア、その両方に手を出すべきではなかった。
部屋に入ってきた男を見て、Aはひどく冷ややかな目を向けた。
378人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時