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三十六話 [彼女は何者か] ページ38

中也の制止も聞かず、彼女は一人で男達の方は行く。
中也は後ろから彼女の動向を観察する。



「何するつもりだよ彼奴…」



すると、Aは男達の視界に入るぐらいの距離の所で立ち止まった。
男達は路地の先にいるAを見つけると、荒々しく声をかけた。



「おいそこの!」



「はい、なにか?」



至って普通に、偶然そこに通りかかったような態度で接する。
まるで、"常日頃から偽ることに慣れている"かのように。



「ここらで帽子を被った背の低い男を見なかったか!?」



背の低いは余計だぶっ殺すぞ。
手をついた壁に力を入れすぎて壁に亀裂が入った。



「帽子を被った…?
あぁ、さっき私が路地に入った時に出て行った人かな…」



「クソッ、逃げられたか!!」



男達は悔しげにそう吐き捨てた。
そんな男たちを見る少女の目は冷ややかだった。



「今ならまだ追いつくはずだ!早く追え!絶対に逃がすな!!」



男は彼女に目もくれず、路地の奥に消えていった。
男達の荒々しい足音と、路地を通り抜ける風の音が響く。



「普通こんな所に子供がいたら警戒するだろ…」



長年、あの家で培われた嘘の精度に嫌気が差す。
スッと無表情に変え、若干の目つきのキツさを残しつつ、彼女は中也の方を向いた。



「ほら、追い払えた。
私は彼奴らとは関係ないからご心配無く」



「…手前ェ、何者だ?」



さっきは彼女が敵ではないのかと疑ってそう聞いた。
しかし、今は違う。
純粋に彼女が何者なのか分からなかったからだ。



「ただの一般人、それだけ」



すると、彼女は中也に近づき、
なにかを取り出して、それを中也の頬に当てた。



「なにす…」



「血が出てる。放置するのは良くない」



血?
そっと頬に触れると手袋越しにヌルリとした感触があった。
どうやら刺客に襲われた際に切ってしまっていたらしい。
今まで気づかなかった。



「これで拭いて」



彼女が頬に当てたのはハンカチだった。
刺繍が施された、明らかに高級そうなハンカチ。



「おい、これ大事なモンなんじゃ」



「要らない。高い物に興味なんてない」



やたらきつい口調で言われた。
中也はとりあえずそのハンカチで傷口を押さえ、止血をした。



「見栄の為だけに待たされたものに価値なんてないもの」



その呟きは風に乗って消えた。

三十七話 [調子は狂うためにあるらしい]→←三十五話 [警戒する男は疑いを持つ]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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