二十九話 ［入社試験とは］ ページ31
死への覚悟も今生の別れもしたのに
いつまで経っても爆発音はしなかった。
「…？」
違和感を持ち、目を開ける。
同じく不思議に思ったであろう敦と目が合った。
「生きてる…」
顔を見合わせていると、太宰と国木田、そして何故か爆弾魔の青年がこちらを覗き込んでいた。
「やれやれ…莫迦だとは思っていたがこれほどとは」
「敦君羨ましいなぁ。抱きしめちゃってさ」
「あれほど危ない事をする奴があるか」
「へ？…え？」
「はぁ…？まさ、か…」
頭を押さえて呻く。
敦は未だに状況把握ができていない。
「道理で爆弾がやたら軽いわけだ…」
「軽い…え？」
「火薬詰まってる割には随分軽くておかしいと思ったんだ…」
爆弾を持った瞬間の重みの可笑しさ。
あれには気づいていたが瞬間的なもので気にとめる余裕が無かった。
「ああーん兄様ぁ！大丈夫でしたかぁぁ！？」
「痛だっ！？」
「グルだったか…。…え、兄様？」
突然イチャつき始めた爆弾魔と人質の少女に、Aは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「…へ？」
「完全に騙された…」
「小僧、娘。恨むなら太宰を恨め。
若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」
「数時間前の私を殴りたい」
「そう云うことだよ二人とも。つまりこれは」
太宰が得意げに云う。
全て彼の思惑通りというわけだ。
「一種の…入社試験だね」
「入社…試験？」
「その通りだ」
威厳溢れる声が響く。
振り向くと、そこには着物を着た鋭い眼差しの男性が居た。
彼の名は福沢諭吉、武装探偵社の社長である。
異能力は『人上人不造』
「社長」
「しゃ、社長！？」
「そこの太宰めが『有能な若者達が居る』と云うゆえその魂の真贋試させて貰った」
なるほど、社員全員が仕掛け人というわけか。
「君達を社員に推薦したのだけど敦君は如何せん区の災害指定猛獣。
Aちゃんは住所身元一切不明、保護するべきか社内でも揉めてね」
敦は口を開けて唖然とする。
Aは頭を抱えてため息をついた。
「で、社長…結果は？」
鋭い眼差しが敦とAを射抜く。
一瞬、Aを見た社長の目が見開かれた気がした。
福沢は静かに云った。
「太宰に一任する」
どうやら魂は認められたようだ。
三十話 ［騙されても逃げる事は可能らしい］→←二十八話 ［回る思考と覚悟］
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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう！めっちゃ好みです！更新頑張ってください (2月5日 22時) (
レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか？誠に勝手で申し訳ございません｡ (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
碧(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか？ (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年3月11日 14時
