【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました

二十八話 ［回る思考と覚悟］ ページ30

タイマーが表示するのは5の文字。
思わず喉から変な声が出たのは仕方ない。



「あああああああ！？」



叫び虚しくタイマーは進んでいく。



「爆弾！爆弾！あと5秒！？」



「解除！解除は！？」



騒つく探偵社の社員。
敦を押しのけて爆弾を確認する。



『このタイプは一回動くと解除出来ないタイプだ！！』



昔、"何かあった時のため"に教わった知識にはこのタイプの爆弾の知識があった。



『起爆前なら配線を切れば解除できた…！』



知識は武器となる。
かつて父がそう云っていた。
だが今ここでその武器はなんの意味も持たない。



「被せるもの…爆風を抑えるしか…！」



その時、彼女は少なからず唖然とした。
彼は何をやっているのか、それを理解することが出来なかった。



「なにを…なにをやってるんだ！！」



敦は爆弾の上に覆い被さっていた。
彼自身も自分の状況が理解できていないようだった。
ほとんど無意識の行為だったのだろう。



『駄目だ駄目だ駄目だ！あのままじゃ敦が死ぬ！！』



タイマーは2と表示していた。
あと二秒で彼は死ぬ。



『考えろ考えろ考えろ！！』



あと二秒でなにができる。
彼を死なせず、かつ他の者も助ける方法。
あと二秒、されど二秒。



『爆風…そうか！』



「敦退いて！！」



敦を渾身の力で引き剥がし、爆弾を掴む。
タイマーは二から一は変わる。



「莫迦！」



太宰が叫ぶ。
敦もなにか云っていた。
でももう止められない。
賽は投げられた。



『爆風を抑えるなら…』



爆弾を爆弾魔が座っていた机の下に放り込む。
ここなら爆風を緩和できる。



「Aちゃん！」



誰かの声が遠くで聞こえる。
タイマーは一から零に変わろうとしていた。



『嗚呼ここで死ぬのかな』



距離的に爆発したら自分は死ぬだろう。
あれだけ生きたかったのに、今はなぜか満足している。



『そっか…お父さんみたいに誰かを守って死にたかったんだ…』



なにも残さず死ぬのは嫌だった。
でもなにかを助けて死ねるなら、



『それはそれで本望かな』



ー人を不幸にした私が、誰かを救えるならー



その時、手を掴まれた。
強く、引っ張るようにして。



「Aちゃん！」



それは敦だった。
敦は彼女を自身の所へ引き寄せるとそのまま倒れ込んだ。
最後に思ったのは、彼への謝罪だけだった。



「私のせいで…ごめんね」

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