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十七話 [何者なのか] ページ19

パンパンと制服のスカァトの裾についた埃を取り、
乱れた胸元のスカーフを直す。



「敦は武装探偵社に入るんですか」



「そうなるね。保護みたいな形かな」



「そう…」



長い睫毛が伏せられる。
こうして見るとやっぱり心中に誘いたいくらい綺麗だなぁと太宰は一人で感心してしまう。



「じゃあ、敦のことお願いしますね」



すると言うが早いか彼女はぺこりとお辞儀をして立ち去ろうとする。
その行く手を太宰が阻んだ。



「待ちたまえよ。君もうちの社員になる予定なのだよ?」



それに対して後ろで国木田がなにか言うが完全にスルーする。
こういう時の国木田の小言は無視するに限ると太宰は長年の経験から知っている。



「私に不思議な力はありません。非力な女学生です」



Aは貼り付けたような僅かな笑みを浮かべた。
その笑みに、太宰は顔をしかめる。



『この笑顔は好きじゃないなぁ』



かつての自分を思い出す、胡散臭い笑みだ。
太宰は微笑むAに云う。



「君は敦君の正体を知っている。口外されるとまずいのだよ」



「もちろん誰にも言いません。なので早くそこを退いてください」



彼女が苛立っているのはわかった。
それでも太宰は退かない。



「正直に云うよ。Aちゃん、君はいったい何者なんだい?」



「だから普通の…」



「ではなんで国木田君の名前を知っていたんだい?
私が名前を言った時も動揺していたよね?」



国木田の名前を出した時、彼女は国木田のフルネームを呟いた。
そして太宰が名乗った時は動揺していた。



「君は何者なんだい?」



少女の顔に焦りが滲み始めた。
もう一押し。
彼女が焦りを隠すように視線を太宰より上にあげる。
その瞬間、彼女の紫の目が見開かれる。



「何故…嘘…だって…なんで…」



彼女の瞳に映る、月。
何があったのか、太宰が震える少女を落ち着かせようと手を伸ばす。
しかしAが後ずさったため、触れることは叶わない。



「昨日は三日月だった…此処は…此処は何処…」



三日月?
太宰の記憶が正しければ此処最近三日月は出ていない。



「此処は…」



その時、フッと少女の体が崩れ落ちる。
糸が切れた人形のように落ちる体を寸での所で抱きとめる。



「おい、大丈夫か!?」



国木田達が意識を失った少女に駆け寄る。
太宰は少女を抱きかかえ、その細い肩にぎゅっと力を込めた。

十八話 [少女の引取先]→←十六話 [これが先触れ]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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