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九話 [虎に追われて] ページ11

国木田は敦を床に叩きつけたまま云った。
武術武装探偵社とは荒事専門だと。



「茶漬け代は腕一本かもしくは凡て話すかだな」



「…っ!」



「敦今動かない方がいい、あのまま捻ると腕折れる」



「怖いこと真顔で云わないでよ!」



「…骨が折れ、凄まじい痛みが襲ってくると思う」



「具体的にとかじゃなくて!!」



「注文が多い」



「まあまあ国木田君」



ようやく太宰が二人の間に割って入った。
遅すぎる、太宰を睨むとニッコリと楽しそうな笑みを向けられた。



「君がやると情報収集が尋問になる。社長にいつも云われてるじゃないか」



そこでようやく敦の手が解放された。
国木田は野次馬達を手で追い払う。



「あれだけやったらそりゃあ物珍しさに野次馬も来る…」



「なにか云ったか娘」



「なにも」



Aは先程太宰が首を吊るのにいいと云っていた鴨居辺りを見上げてとぼける。
国木田の視線を感じるが無視を決め込む。
そうこうしているうちに敦がポツリポツリと語り出した。
自分の身の上を、何故孤児院を追い出されたのか。
そして虎の話を。



「…酷い話」



聞き終わった後、Aは低い声でそう云った。
口減らしに追い出され、挙句に消えろと云われたのだ。



「大人は勝手…いつもそうだ…」



虎の話など信じてなかったが、敦の雰囲気からして嘘ではなかった。
湯気が立つ茶を喉に流し込む。
程よい苦味が舌に染み込む。



「あいつ、僕を追って街まで降りてきたんだ!」



敦は叫ぶようにして云った。
虎に追いかけられた恐怖を吐き出すように。



「それいつの話?」



「院を出たのが二週間前。川であいつを見たのが…四日前」



国木田は、その時期から虎が目撃されたと云う。
ふと違和感を感じた。
まるで棘が刺さったかのような違和感。
何だろうこれは。



「ひとつ…聞いてもいい?」



「え?」



「虎とどれくらいの距離があった?」



「えっとすぐ後ろにいて…」



「すぐ後ろ…」



口元に手を当てて考える。
すぐ後ろに虎が居る状況…あり得るのか?
ふと視線をあげると太宰がこちらを見ていた。
そして意味ありげに笑うと、



「二人とも、これから暇?」



…とても嫌な予感がしたのは敦も同じだった。

十話 [金が絡むと人は変わるらしい]→←八話 [虎探しの探偵]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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