検索窓
今日:1 hit、昨日:58 hit、合計:579,107 hit

二百十五話 [駆け引きの二人] ページ15

僅かな沈黙が訪れた。



『…手前、本気で云ってんのか?』



中也は自分が云ったことの意味をちゃんと理解した。
その上で聞くのだ。
"お前は正気なのかと"。



「本気です。もうこれしかない」



『…』



「自分でも莫迦だと思います。でも…これが私の最適解なんです」



このままでは探偵社は終わる。
社会の全てを敵に回して、滅びる。
それを防ぐ為にはもうこれくらいのことしか出来ないのだ。



「私は…もう誰も失いたくない」



モノクロの世界を壊してくれた仲間を、あの場所を失くしたくない。



「だから…お願いします」



手段は選ばない。
それが探偵社員として許されないことだとしても。
Aの声は覚悟と、そして冷たさを感じる。



『…手前の覚悟は判った』



中也だって知っている、今の探偵社の現状を。
そしてあの少女が一度決めた事を曲げる事は決してない事。
だが、



『それで勝てるほど奴らは甘くねぇぞ』



理想論ばかりでどうにかなるほどこの世界は綺麗じゃない。
歪んで、汚れて、どうしようもないのがこの世界なのだ。



『仮に俺が手前の依頼を受けたとして、それが間に合うかは判らねぇ。
それに奴ら相手に通用するかも五分五分だ』



彼女か依頼した内容は確かに有効な一手かもしれない。
が、決定打となるかは決して云えない一手なのだ。



『それを頼りにして、もし駄目だったら手前はどうすんだ?
今回ばかりは無事じゃ済まねぇぞ』



これは警告だった。
そこから先は深淵、踏み込めば死ぬという。
死地を何度も潜り抜けてきた中也だから云える警告。
Aが死ぬかもしれないという未来は着実に進んでいる。
自分の行動次第で彼女の生死が決まるかもしれない。
だから、思う。



ー死なせたくねぇんだよー



気づけよ。
厳しい言葉を吐いても、彼女には生きていてほしい。
エゴでもなんでも良いから、やめて欲しかった。



「…ごめんなさい」



彼女の答えは謝罪だった。



「私は…それでも助けたいんです」



『…あぁ、そうか』



なんとなく判っていた。
もう、手は届かないのだと。
携帯を握る中也の手に力がこもる。



『…依頼、受けてやるよ』



その依頼を、受け入れた。
マフィアとして、幹部として。
だからこの話をしなくてはならない。



『で?手前は対価に何を支払う?』



大人の取引の時間だ。

二百十六話 [対価というもの]→←二百十四話 [取引の内容は]



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (628 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2614人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。