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二百十三話 [貸し借りというもの] ページ13

マフィアの救援が探偵社を助ける数分前。
中也の携帯に差出人不明のメールが届いた。



「《出会い》、ねぇ」



そのメールを開くと中には鍵がかかったメッセージがあった。
四桁のパスワードの隣には『出会い』とだけ書かれている。
四桁、出会い、中也はじっと画面を見つめ、ゆっくりと数字を入力していく。
根拠なんてない、でも思い当たる数字なんてこれしかないのだ。



「…はっ、マジかよ」



パスワードが解除される。
あれが当たりだったのだ。
ということはもう、これを送ったのが誰かなんて判ったも同然だ。
解除されたメッセージに書かれている番号を打つと数回のコール音がした。
そして、通話に切り替わる。



「随分手の込んだ事しやがるじゃねぇか」



『…解除、できたんですね』



「俺と手前にしか判らない数字にしたくせによく云うぜ」



そうだろうと問いかける。
電話越しに息遣いが聞こえた。



「なぁ、A」



『…』



メッセージの相手は、Aだった。
探偵社が危機に陥り、連絡が取れないと聞いていたが無事だったようだ。



「パスワードの解除コード、ヒントは出会い。
まさかと思って入力してみりゃビンゴだった。
…あれは俺と手前が初めて会った日の日付四桁だ」



『…はい、そうです』



「云ってしまえば俺と手前しか知らねぇ数字だ。
本当に、手の込んだ事しやがる」



彼女らしくないロマンチックなやり方に少し笑う。



「だが、そうまでしても"俺"と個人的に話したかった…違うか?」



電話の向こうでAがなにかを飲み込む気配がした。
どうやら当たりなようだ。



「A、手前は"何の為"に俺に連絡してきた?」



声は驚くほど冷たく、低かった。
隠し事をしている少女の腹の中を暴くように。



「少なくとも今の手前は"探偵社員"として俺に連絡したんだろ。
じゃなきゃこんなことしねぇよ」



『…矢張り、判っているんですね』



彼女の声も低かった。
電話越しに、なにかを決意するような深い吐息が聞こえる。



『中也さん…私達は互いに貸し借りがあるはずです』



中也の眉がピクリと動く。
思い当たる節はいくつかある、だがそれをどうするのか。



『それを…今回の取引で私の大きな借りとしてくれませんか』



少女もまた、己の戦いに身を投じる。
取引という、戦いの中で。

二百十四話 [取引の内容は]→←二百十二話 [生命の燃料を注ぐ]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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