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二百二話 [理想の終着点] ページ2

洋館の中をひたすら走る。
酸素が不足し、視界が歪んだ。



「国木田さん!こっちです!」



賢治が見つけたある一室に飛び込み、扉の前に家具を置いて塞ぐ。
混乱に飲み込まれそうな中、国木田は云う。
先程狙撃したのは軍警の対テロ部隊、そして建物は包囲されているはずだと。



「投降しましょう、ボク達は無実です。調べればきっと…」



『無駄だ』



谷崎の言葉を遮るように繋がっていた携帯から乱歩の声がした。



「乱歩さん、御無事でしたか!」



『種田長官の止血処理をして逃走中だ』



彼は敵の策略より種田を刺した犯人にされた。
種田の意識が戻れば無実を証言して貰える可能性もあるが、望みは薄いと乱歩は云う。



「『本』は異能者が創ったのではと長官が云ったが多分違う。
あれは異能の更に上の『何か』だ」



その証拠に、虫太郎の異能では不可能だった記憶改竄まで成されている。
国木田達の記憶には、自分達が人質を拉致し殺した、あるはずのない記憶が存在した。



「じゃあ若し捕まッたら…」



『政府には『記憶を読む』異能者が居る。調査されれば死罪は確実…』



『居たぞ!』



繋がっていた携帯から第三者の声がする。
その後、銃声と、足音、何かが割れる音がして、携帯の通話は途切れた。



「そんな…乱歩さんまで…」



谷崎が呆然とし、こぼした。
絶望がすぐそこまで迫る音がする。



「あの時乱歩さんが云ってた…『探偵社が滅ぶ』ッてこの事だったンですね…」



各々の顔に深淵の色が混じる。
静かな部屋の中、国木田が理想と書かれた手帳を震える手でなぞった。



「ここが理想の…終着点か…」



こんな未来が、最終駅なんて。
迫る絶望に心がねじ切られそうになった時、携帯が再び震えた。



『…聞こえますか』



電話から流れてきたのは、聞きなれた少女の声だった。
携帯には非通知と表示されている。



「…A?」



『良かった…繋がった…』



国木田の声が届いたのか、電話越しにAの安堵の息が聞こえた。



「お前…無事だったのか…?」



『はい…私は大丈夫です。
…そちらの状況は大体把握しています』



ノイズが混じる中、彼女は低くそう云った。



『もう間もなく部隊が突入してきます。
今から云う通りにしてください』



まだ、終わる時ではないと、聞こえた気がした。

二百三話 [役目を遂げる]→←二百一話 [DOGS HUNT DOGS]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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