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二百十七話 [社会の敵] ページ17

人質事件が起こった洋館の一室。
未だに血の匂いが漂う中、古い天井に亀裂が入る。
大きな音をたてて天井が割れ、二人の人物が落ちてきた。



「痛た…」



床に落ちた少年、敦はゆっくりと起き上がり、共に落ちてきた少女に声をかける。



「き…鏡花ちゃん、大丈夫?」



「少し…疲れた」



奪った特殊部隊の服を着た少女、鏡花の顔に浮かぶのは僅かな疲労の色。



「当然だよ…呑まず動かずで二日近くも隠れてたんだから…けど…お陰で助かった」



約二日前、探偵社は罠に嵌められ社会の敵となった。
ゴーゴリとの戦いで洋館に残された敦の救出に向かったのは他でもない鏡花だった。



「敦を助けに戻るだと!?」



二日前Aからの連絡でなんとか洋館を脱出したというのに、国木田は苦い表情をする。



「正気か?あの建物はじき鑑識が押し寄せる。
逃げ場も隠れ場所も無くなるのだぞ」



「構わない」



鏡花の目には強い決意。
それを受け止めた国木田は手帳を取り出し、なにかを書き込みそれを渡す。



「ならせめてこれを持って行け」



「…わかった」



鏡花は洋館に戻り殺されそうになっていた敦を救出した。
その後、一室の天井を切り抜き、そこに潜り込み、国木田の手帳で作った接着剤とパテで偽装。



「小柄な僕達だけだから巧くいった」



「それでも危険な賭け。…水と食べ物を探してくる」



「…ねえ鏡花ちゃん、本当かな?」



虎の聴覚を持つ敦は現場検証の声が聞こえた。
社長である福沢が逮捕されたこと、逃亡中の国木田が自爆し生死不明なこと。



「如何して…こんな事に…」



仲間が、社がめちゃくちゃにされた。
どうしたら良いのか判らない。



「…今は先ず、生き延びることが優先」



鏡花の声が虚しく響く。
今は、生きていることが最低条件だから。
洋館内には鑑識はもう居なく、二人は無事に出ていくことができた。
その時、茂みから音がする。



「…誰かいる」



刀を構える鏡花は茂みを睨んだ。
敦も思わず身構え、茂みを見つめる。
心臓の音が近くで聞こえる。



「…いた」



茂みから現れた黒いフードの人物は敦と鏡花を見て、安心したように息をはいた。
そしてフードをゆっくり脱ぐ。



「Aちゃん!?」



紫色の目に悲しげな色を浮かべてAは頷いた。

二百十八話 [牙をむく正義]→←二百十六話 [対価というもの]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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