74:立射 ページ26
ー
体配は、大前の動作によって速度が変わる｡
それでいて大会は制限時間があるので、如月は慎重に入場していった｡
(…)
風すらも音を出さず静寂が訪れる中、彼らの歩を進める床を擦る音だけが弓道場に響いた｡
本座の前に5人揃い、跪坐をしてじっと待つ｡
『ー始め!』
ストップウォッチを押してタイマーが動き出すと同時に、如月を始めとして5人は揖をした｡
まだ動作は揃ってないが、携帯越しに彼らの丁寧な所作が見える｡
大前の如月が立ち、胴造りまで終わらせる｡
物見をし弓構え、打起し、大三と弓を引き始める｡
ｷﾁｷﾁｷﾁ…
…………
ーｶﾝｯ
ーﾀﾝｯ!
(丸｡)
次の山之内に携帯のカメラの焦点を合わせる｡
山之内は少し動きがぎこちなく、肩がうまくまわっていなかった｡
ーｶﾝｯ
ーｻﾞｯ
矢が地面を擦る音と、彼が“しまった”とでも言うように表情が強ばる｡
矢が的まで届かなかったんだ｡
彼がシュンとした表情で座ると、今まで見えなかった鳴宮が既に打起しをしている｡
5人の中でも一層美しい射をする彼は、前の2人よりも動作はゆっくりだ｡
大三、引分けとテンポよく身体を開いていく｡
…ｷ、ｷﾁｷﾁｷﾁ…
…
-ｶﾝｯ!
(1.5秒。まだ早い｡)
矢が的を射る音はない。けどあれだけ綺麗な射なら、きっと的の近くにはいっているだろう｡
(次竹早だけど…中るな｡彼｡)
竹早の動きを見て、すぐにわかった｡
正確に会までもってきて、矢線に沿って伸びる｡その動きは矢が変な方向に飛んでいくのを許さないようだった｡
ーﾀﾝｯ!
(丸か。今のところ〇××〇、できるならここで〇を出したいところだけど…)
最後の小野木が大三をとる｡
そして引分けで一気に会までもっていく｡
…ｷﾞ、ｷﾁｷﾁ…
……………
ーｶﾝｯ!!
…
(×｡意識しすぎたか?)
落は全員の射が見えるし1番チームの状況がわかる｡
試合的な意味で言えば落の一本で勝敗を分ける事だってある｡
きっと小野木はそういう事も含めて、意識してしまったのかもしれない｡
(…いや、他人の心情の詮索はするもんじゃないか｡
まずはしっかり撮って、彼らのためになる事だけ意識しよう｡)
そう思い、2本目を引こうとする如月にカメラの焦点をあてた｡
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白雪 - 初めまして、白雪と申します。ツルネの話が読めて嬉しいです。更新楽しみにしています！ (12月26日 11時) (
レス) id: c47909f85b (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます!!数年前の一期の話ですが…気長に読んでいただければ嬉しいです！ (7月29日 20時) (レス) id: 2bd9d8ee2e (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (7月29日 8時) (レス) @page17 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 | 作成日時：2023年4月2日 16時
