68:気づかれない優しさ ページ20
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弓道場に着いた私たちはマサさんに会うと早々に5人は川の臭いで風呂行きへと直行した。
風邪をひかないためにタオルを渡していたが、ちゃんと乾くまでには至らず臭いも除く事はできなかった。
滝「全く…まさか川に落ちてるとはな。」
女子の稽古も終わり片付けをしている傍ら、私はさっきの川落ちの話を彼にしていた。
勿論、写真の話はせずに。
『流石に鳴宮と小野木が川に入ってたのを見た時は驚きましたね。
帽子を鳴宮が追って、小野木が鳴宮を追って。最終的に2人の安否確認のために他3人も手足が濡れて。』
滝「そうだな…って、小野木が鳴宮を追ったのか?」
マサさんが少し驚いて私を見た。
的中の記録が書かれた黒板の文字を消しながら私も同調する。
『そうなんです。
てっきり彼も帽子を追ったのかと思ったら、鳴宮が川に入ってなきゃ自分だって入ってない、と』
滝「それでも海斗は帽子を追いそうだけどな。
でも…そうか。」
彼は柔らかく笑った。
きっと気がかりだった関係性に良い兆しが出た事に安堵しているんだろう。
私だってそうだ。彼らにはこんな食わず嫌いの状態で人間関係を終わらせてほしくない。
マサさんは自身の荷物を持ち、矢道にいた蓮さんを手招きする。
滝「ならあと一歩だな。
よし、俺は先にアイツらをおちょくってくるから、Aは女子と一緒に片付け済ませてくれるか?」
『おちょくるって…程々に…わかりました。
準備をしてくださってるお母様にも声かけておきますね。』
滝「ああ、頼んだ。
蓮にも手伝わせていいから」
蓮「え?俺がなんだって?」
カメラを持った蓮さんがこちらに来る。
内容は聞こえてなかったようだ。
滝「蓮をこき使えって話」
蓮「え〜俺カメラマンで忙しいんだけどな〜」
滝「少しくらい手伝え。俺は先に戻ってるから」
蓮「はいはい。んじゃAちゃん俺は何すればいい?」
『あ〜…それなら…』
蓮さんと話していると、いつの間にかマサさんの姿は消えていた。
二言三言話していただけなので、そこまで時間がかかった訳でない。
(…やっぱマサさん男子のことめっちゃ気にしてたんじゃん)
表に出さないところが、らしいと言えばらしい。
ただ、それはきっと本人たちはあまり気がつく事はないだろう。
(…)
私はその気遣いがどこかで鳴宮たちに気づいてくれればと、密かに願った。
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白雪 - 初めまして、白雪と申します。ツルネの話が読めて嬉しいです。更新楽しみにしています! (12月26日 11時) (レス) id: c47909f85b (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます!!数年前の一期の話ですが…気長に読んでいただければ嬉しいです! (7月29日 20時) (レス) id: 2bd9d8ee2e (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (7月29日 8時) (レス) @page17 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 | 作成日時:2023年4月2日 16時