63:裏側2 ページ15
ー休憩中
2人で弓道場へ向かう中、マサさんは休憩前の会話を思い出すよう言う。
滝「正直、俺もそうだと思うよ。
“試合で失敗する”ってことは、これまでやってきたものがうまく反映されない事でもある。
このままだとアイツらは自分すらも信じなくなるだろうな。」
『…頼れる人がいないと、自分だけでも頑張ろうとしますから。そうすると、どんどん自分を追い込みますしね。
“自分が支えなくちゃ”って』
滝「ああ。
そうなったら試合どころじゃないだろうな。
けど、Aが言った通りあいつらは仲間を見ていないし、人がいないから沢山引けるっていう利点に甘えてる節がある。
少人数での稽古はそれが利点だが、代わりに競争率が低くなるし、色んな射を見る機会も、周りから与えられる気づきも減る。
だから、県大会までの時間がない分、稽古の質も一人一人の意識も高める必要がある。」
『…』
彼は真剣な表情で前を見据える。
弓道場までそこまで遠くないせいか、私たちの数m先には弓道場の扉がある。
が、私には彼は扉は見ずに、別のところを見ているように感じた。
(…?)
踏み込んではいけないような雰囲気は、声をかけるのを躊躇うのに充分だ。
けれど彼はその空気を扉に手をかけ、開けると同時に一気に変えた。
滝「けど、この事は俺よりAのほうが適任だろ。
なんたって俺よりおっかない。」
『人が気にしてるところを爽やかな笑顔で言わないでくれます?』
滝「本心だよ。」
『余計です』
笑いながら先にマサさんが中に入る。
後に続いて私も入ると、的場にいる男子部員の姿が見えた。
彼らは既に的をつけ終えて、私が出した紙を見ながら何か話し込んでいた。
その姿に、マサさんは私の横で屈み囁く。
滝「…ほら、あいつらわかりやすい。
やっぱりAのほうが合ってるだろ?」
隣にいる彼は、そう言って笑った。
265人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白雪 - 初めまして、白雪と申します。ツルネの話が読めて嬉しいです。更新楽しみにしています! (12月26日 11時) (レス) id: c47909f85b (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます!!数年前の一期の話ですが…気長に読んでいただければ嬉しいです! (7月29日 20時) (レス) id: 2bd9d8ee2e (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (7月29日 8時) (レス) @page17 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蒼 | 作成日時:2023年4月2日 16時