短編集。

。 ページ6

……違う。
アーヤは、砂原の事が好きなんだよ。



結局、答えを変えてしまったけど、
一度は プロポーズを 受けようとしたんだ。





そう言えたら、楽なのに。



思ってる事と、違う言葉が 口から零れてしまう。





「砂原は、友だちが死んでも 泣かない人に、惚れたの？ 違うでしょ。

　アーヤは、砂原が死んだら悲しむよ。きっと、俺らが嫉妬するくらい 泣く。

　……砂原は 好きな人を泣かせたいわけ？」





遠回しだけど、ちゃんと 伝わるよね。



俺の言いたい事。





死ぬな。





アーヤの泣き顔は 見たくないから。



砂原を想って、泣いてるアーヤなんて 俺らは見てられないから。



好きな人が 他の男を想って泣いてる姿なんて、俺らの誰も耐えられないから。



だから、死ぬな。





「もう、泣かせたくねぇよ。

　それでも 行きたかった。シュンの死を受け入れるには、中東に行くしかないと思ってた。

　……日本で十分だったけど」





そう言った砂原は ニカッと、
男でも カッコいい、と 思う笑顔を見せて。



この笑顔にやられたのかな、アーヤ。



……あ、砂原。今、爆弾 落としたでしょ。





「アーヤの事、泣かせたんだ」


「あー、お前いなかったな。七鬼も。

　気になるなら他の奴に聞けよ、俺 思い出したくねぇから」





誤魔化されてしまった。



部屋の隅に 視線を移した砂原が 呆れた表情になるから、俺もそっちを見る。



……はぁ。



今まで忘れていた事に、自分でも驚く。





「お前、そんなのも届かないのか。ちっせ」


「なにおっ！ バカ杉！」


「俺は 事実を述べたまでだ、チビ武」





黒木はその近くで、静かに 微笑みながら傍観。



アーヤと小塚は 苦笑い。七鬼と名波は、この間にも 片付けを進めてる。





「……死ぬのは もう少し後でいいや。
　俺、2人の言い合い もう少し見てたい」


「いいんじゃない？
　天国に行ったら、アーヤもいないし」


「確かに。
　俺、天国行って どうするつもりだったんだろ。立花いなかったら、生きていけねぇよ」


「いや、天国って死んだから 行くんでしょ。
　生きていけるも 何も、ないって」





そうだった、と言って 笑い声を上げる砂原の顔は、さっぱりしていて。



あぁ、もう大丈夫かな。



アーヤを送る時、黒木に言っておこう。



砂原は 中東に行かないけど、
また アーヤを口説きに来るから注意、って。



お姫様の横取りは 阻止しないと、ね。





Fin.

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