短編集。

激怒ポイント。side.上杉. ページ34

くっそ。



大丈夫、だよな……。



……。



はぁ。



塀の上で 固まった、意地っ張りを思う。



……絶対、怪我はさせねぇ。



両手を広げて、飛び降りるよう 言う。



やっぱ、怖い、か。






「受け止めるからさ。早くしろ」





頑張れ、とか 言う方が 良いんだろうな。



黒木だったら、
早くしろ、なんて 絶対 言わねぇ。



理解、してるのに。



行動できない 自分に、哀しくなる。





「ああ、俺やろうか」





七鬼を見た途端、安心する 立花。



……嘘、だろ。



俺の時は、心配そうだった立花が、七鬼と代わって すぐ、飛び降りて来て。



……。



なぁ。



俺、そんな頼りねぇ……?



立花を 両腕で抱えたまま、耳元に唇を寄せ 会話する七鬼を、少し 恨めしく思う。



でも、あんな 近いと、理性、飛ぶかも。



やっぱり、七鬼に任せて良かった、
と 思っていると、立花の絶叫が 聞こえて。



え。



すっげぇ、怒ってる……。



その怒り様に 驚いて、思わず 呟くと、七鬼が 片目を瞑る。





「それは、2人だけの秘密」





おまえ、余計 怒らせたぞ。



そこに 美門が、
不思議そうな 顔で、塀を 跳び越えて来て。



立花が、井戸の方へ 向かう。



……。



美門が 俺を見て。



俺は、黙って 七鬼を睨む。





「おまえ、マジで、何 言ったんだ」





俺が聞けば、
キョトン と した顔で、爆弾を投じて。





「ん? 体重、結構あるよな。って。

　……え。何か マズッた? 俺? 何処を?」





美門と 顔を見合わせ、溜息を吐く。



俺でも、さすがに 言わね。



ヒステリー 起こして、後が面倒だ、って わかるじゃん。



体重の話は、100% 怒り出す。女なら。



俺ら 2人の リアクションを見ても、反省の色を見せない七鬼に、
多少 苛立ちながらも、説明を始める。





「女に 体重の話は、普通 ダメだろ」


「ん。殆どの子の、激怒ポイントだね」





美門の言い方が 面白くて、少し 笑う。



七鬼は、やっと 理解したようで。





「あ、
　体重の話をしたから、立花を怒らせたのか。

　……女子、って 不思議だな。体重なんか、気にする必要 ないだろ」





いや、そこじゃなくて!



素で言ってる 七鬼に、呆れてしまって、反論するのも 面倒に思えてくる。





「体重ある、って 所に、怒ったんだよ……」





美門の 諦めた様な、小さい呟きは、
近くにいる 俺にしか、聞こえなかった……。

。→←後書。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す