短編集。

クイズ番組。 ページ16

「今日は、一般の方に、
　芸能人と 対戦して頂きまーす！」




司会者が言うと、わーっと 歓声が上がるスタジオ。さすが、テレビ。



若武は 緊張してるのか 足が震えてる。



アーヤと小塚も 緊張してるけど、それは 全然 いい。



美門がこの状況を 楽しんでいるのも、
上杉が 帰りたそうなのも、まだ 可愛い。



砂原が ずっと アーヤを見つめてるのも、今は許せる。いや、普段だったら 邪魔するけど。



許せないのは。





「七鬼クーン、君は何をしているのかなぁ？」





スタジオを、興味深そうに 歩き回る七鬼。



そんなに見たいなら、また 来れるように、知り合いと 交渉するから、さ。



今は。





「七鬼！
　俺より 目立つんじゃねーっ！」


「バカ武。そこじゃねーだろ」


「なにおっ！ バカ杉！」





あぁ、もう、こっちも 何がしたいんだよ。



溜息を吐いた 俺を、
美門が 面白そうに 見てきて。





「黒木も、精神的にやられる事 あるんだね」





もう、苦笑いしか 出て来ない。



番組に 皆で 出演する事になったのは、この番組のスタッフが 俺の知り合いだから。



安いギャラで 活躍してくれるタレントを 探している、と聞いて、若武に相談。



その結果、賞金以外はタダ働き、という条件で俺らは 今 ここにいる。



これは、皆に言った 表面上の理由。



本当は、タレントを用意したら 君の出生について教える、と 言われて。





「そこの2人、喧嘩は やめようか。

　七鬼クンも戻って。

　うん、じゃあ、2回目。スタート！」





プロデューサーの指示を 立ったまま聞く 知り合いを、思いっ切り 睨む。



取引(情報交換)を 終わらせたのは、10分前くらい。スタジオを出た所の廊下で。



その結果が。





『君は、アメリカの病院で 生まれたんだよ』





思わず 聞き直した。それだけ？ って。



そうしたら、それだけだよ、って 微笑まれて。



最初から、自分の仕事を 楽にする為に、俺を使ったんだ。きっと。





「リーダーの若武クン、意気込みを」


「絶対、勝ちましゅ！」


「噛むなよ、バカ武」


「なにおっ！バカ杉！」





また 始まった。



俺らは たまらず 失笑するけど、周りは 全員苦笑いで。突っ込み担当の 芸人さんまで。



ここは、俺の出番かな。





「いつもの事なので、気にしないで下さい」





俺が微笑むと、ゲームの説明が始まって。



さすが、司会者。厄介な人の扱いに 慣れてる。

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