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休止発表の記者会見。
俺たちはテレビの前にいた。
『僕たち嵐は2020年12月31日をもちまして活動を休止します』
息を飲んだ。
知っていた。知っていたはずなのに動揺を隠せない。
なのにテレビの向こうの人達はなんて穏やかなんだろう。
「みて！SNSですでにトレンド入ってる！」
黒ちゃんがスマホを見せてきた。
「ホントに休止するんだ………」
どこか遠くを見ている皇輝くん。
櫻井くんに憧れ、Aちゃんに助けられた。
それを嬉々として喋っていた皇輝くんにとっては辛いんだろうな。
俺は………俺はどうなんだ。
ほんの一時だけど、嵐さんと会話させてもらってこの人たちを揃って見れなくなるのは少し寂しいとは感じた。
でもそれだけなんだ。
なのになんでこんなに心がざわつくのか。
そんなの分かりきっている。
けど言葉にしちゃダメなんだ。
「いい？尚大。言葉っていうのはね、言霊が宿るんだ。」
「ことだま？？？」
「言葉にするとそれに意味と意思がつくんだ。名前が1番いい例えかな。」
「よく意味がわかんないよ」
「まだ尚大には早かったかな？けど大きくなったらその意味がきっと分かるよ」
昔、Aちゃんにそう言われた。
未だに理解は出来てない。
けど今持ってるこの思いを言葉にしたらダメというのは分かった。
ブーブー
スマホがなった。
『今どこ？』
Aちゃんからだ。
いつの間にか会見は終わったらしい。
『事務所のいつものとこにいるよ』
『30分で着くから待ってて、一緒に帰ろ』
『分かった』
返信が終わって、スマホをポッケに入れると
「おーりーやーまー、ご飯いこ！」
ちょい空元気な湧。
「ごめん、今日はAちゃんと家で食べる約束してるから」
みんなを見送り、1人になった。
Aちゃん、泣いてないといいなとか
Aちゃん、このまま辞めないよねとか
Aちゃんの事ばっかり考えてしまう。
「尚大！お待たせ！」
走ってきてくれたのだろう。肩を上下させていた。
「Aちゃん」
「ん？」
「おかえりなさい」
家でも無いのにその言葉が出てきた。
Aちゃんの帰ってくる場所には俺がいるよという気持ちを込めて
「ただいま！」
あ、言霊が宿るってこういう事か。
「今日のご飯何食べたい？」
「グラタン！」
「おっけ！足りない具材とか買いに行こ！」
特別な日に日常的な会話。
Aちゃんは多分不安なんだとこの時感じた。
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作者名：らび | 作成日時：2023年2月5日 16時
