【プロセカ】それでも私たちは描き続ける(東雲絵名) (ページ7)

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街頭の下に立つ女の子が、こちらを見ていた。
深い紫の髪に、整った顔立ち。着ている制服は着崩される事なく、いかにも優等生といった印象を受ける。しかし、私はどこか作り物めいた物に見えた。それは、彼女の整った顔に不釣り合いな無表情からかもしれないし、はたまた、ただの気のせいかもしれない。しかし、次の一瞬、彼女は花が開くように微笑むと、口を開いた。

「こんばんは。絵名のお友達？」
「は、はい！そうです！……だよね？」
「なんで自信なさげなのよ。……まぁそうだけど」

少し照れた顔の絵名ちゃん可愛い！じゃなくて。

「暮相Aです。えっと……」
「あ、ごめんね。私は朝比奈まふゆ。暮相さん、絵名と同い年だよね？敬語はいいよ。私も高校2年生だし、気軽にまふゆって呼んでくれれば嬉しいな」
「えへへ……じゃあ、まふゆちゃん。私もAって呼んでくれたらいいから！」
「本当？嬉しい！それならお言葉に甘えて……Aちゃんって呼ばせてもらうね」

お互いに少し恥ずかしい雰囲気の中自己紹介をする。
うん、やっぱり私の気のせいかも。こんなに素敵な笑顔の子に、"作り物"なんて言葉は似合わない。

「ねぇ、私のこと忘れてない？」

すっかり蚊帳の外だった絵名が呆れて口を挟む。それに謝りながら、私はまふゆちゃんと絵名ちゃんの関係が気になっていた。
制服を見る限り、宮女の子だよね。違う学校だし、ましてや私たちは夜間校生だ。普通に学生生活を送っているような、同級生達とは違う。……なんて、偏見もすぎるか。
卑屈な自分の価値観を振り払うように、私はにこりと微笑んだ。

「まふゆは予備校の帰り？」
「うん。絵名達は学校帰りだよね」

親しげに話し出した2人に笑顔で相槌を打ちながら、ふいに自分が邪魔な気がして仕方がなくなってきた。
帰りたいなぁ。
家に帰ったって病気のお母さんがいるだけだけど。

「あ！やばい、今日夜からのアニメ録画し忘れちゃった！ごめん、ちょっと先ダッシュで帰るわ！またね、絵名ちゃん、まふゆちゃん！」
「えっ？ちょっと、A！」

驚いた様子の絵名に背を向けて、Aは一目散に走り出した。
あからさますぎたかな。感じ悪かったかな。二人がどんな関係か聞けなかったな。
様々なことが頭に浮かんでは散って行った。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

息が切れるまで走って、ようやく駅が見えてきた。足を緩め、一人歩く。右手に持ったままの可愛い紙袋の持ち手を、握りしめて。