【プロセカ】それでも私たちは描き続ける(東雲絵名) (ページ3)

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「ふぁ…あ、ねむ。」

絵名はいつも通りの時刻に教室に入ると、小さく欠伸をした。席に座り、やり忘れていた宿題が無かったか確認した後、適当にスマホを出してSNSをチェックする。
もうすぐ予鈴がなる時刻だ。しかし教室は空席が目立つ。まぁ、それも見慣れた光景だが。
定時制なんだし、まともに毎日来る方が不思議だよね、と一人胸の内で呟き、隣の誰も着席していない机を横目で見た。

あと1分。

突然、勢いよく前の扉が開く。

「遅れてすみません！！」

転がり込むようにして入ってきた少女は、息を切らせて謝罪する。教室中が一瞬静まり返り、視線が彼女に集まった。

「あ、あれ…？先生まだだった……？」

風に煽られたのか、前髪がくしゃくしゃになってしまっている。絵名は、一つため息を吐くと彼女の名前を呼んだ。

「A！また遅刻ギリギリなの？ほら、こっち来なさいよ。髪、直したがるから。」
「あっ、絵名ちゃん！おはよ～。」

ヘラヘラと笑って隣の席に着く彼女の前髪を、ポケットに入れているコームで軽く整える。すると、担任の教師が教室に入ってきた。

「出席とるぞー。」
「……呆れた。ホントにギリギリセーフじゃない。」

まだ息を切らしているAにジトリとした視線を投げると、彼女は照れたように笑って頭をかく。

これが、私たちのいつものやり取りだ。

＊

休み時間。絵名は自撮りに対するいいねの数をチェックする為再びスマホを取り出した。

うん、結構伸びてる。コメントもついてるし…。

『マジ美少女！』
『今日も可愛い～♡』

全然興味も無いアカウントからのコメントでも、少しだけ癒される。でも、本当に欲しいのは…。

「…やっぱり、いいね少ないな。」

絵のアカウントでログインし、通知を見る。いつも通り。わかってるけど、苦しいものは苦しい。
なんとなくスクロールして自分の過去の絵を眺めていたその時、一つ、いいねの通知が届いた。

「あ、この人最近フォローしてくれた人だ。」

オリジナルのキャラクターらしい絵をアイコンにしているこのアカウントは、毎回、律儀にいいねを押してくれる。
彼の(彼女かもしれない)投稿は、基本的に絵に対する愚痴や創作キャラクターの設定がごちゃごちゃとしている、不規則なものだ。まるで耐えきれず吐き出されるかのようなそれらは、少しだけ共感出来る。

『頑張った絵ほど伸びなくて萎える』
『描くのやめようって思ってもまた描いてる。筆折る詐欺』

「ただいま！あれ、何見てるの？」